一つ口[語句情報] »
一つ口
「一つ口〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
一つ口の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「星座」より 著者:有島武郎
している。おふくろは六年も留守にしていた俺がいとしくって手放しかねるようだが、何
一つ口を出さない。そして土間の隅で洗いものなどをしながら、鼻水を盥《たらい》に垂....
「土曜夫人」より 著者:織田作之助
せた。 ――といって、興味は感じなかった。ただ、帰れといわぬだけ、――いや、何
一つ口を利かずに、ついて来るのに任せて、やがて、高台寺の道を清水の参詣道へ折れ、....
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
「そうよ。おまんまはどうするんだ、おまんまをな。火の気を使っていけなきゃ、お茶
一つ口にすることもできねえじゃねえかよ。つがもねえ。こちとら下々の者は人間じゃね....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
葉子の消息が絶えてからも、彼は時には彼女を訪ねるらしかったが、肝腎のことは何
一つ口にしなかった。するうちに彼の姿も足も途絶えがちになってしまった。 葉子が....
「黴」より 著者:徳田秋声
るようじゃ心細いね。うまいものも歯で嚼んで食うようじゃ、とても駄目だよ。」 茶
一つ口にしないで、始終曇った顔をしている笹村に、先生は元気らしく言って、生きがい....
「死までを語る」より 著者:直木三十五
女房は取上げた新聞をもったまま、快活に云った。その内、一日、保高が 「読売新聞に
一つ口があるが」 と、云ってきた。そして 「前田|晁《あきら》氏に逢うて、詳し....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
ぬが、しかし、どんなに優れていても人霊は矢張り人霊だけのことしかできはしませぬ。
一つ口に申したら、真正の神様と人間との中間に立ちてお取次ぎの役目をつとめるのが人....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
んを残してゆくのが気になり出した。これでわしももう十年若いとね、およばねえまでも
一つ口説《くど》いて見るんだが、ははははは――コラッ! 新公《しんこう》! てめ....
「神棚」より 著者:豊島与志雄
ぶっ倒れて唸っていた。俺達は黙って其処を立去った。不思議なことには、初めから言葉
一つ口に出さなかったし、立去る時にも捨台辞《すてぜりふ》一つせず、唾一つひっかけ....
「死刑囚最後の日」より 著者:豊島与志雄
とがあるか。」と裁判長はたずねた。 私のほうでは言いたいことばかりだったが、何
一つ口に出てこなかった。舌が顎にくっついてしまっていた。 弁護人は立ちあがった....
「魔法探し」より 著者:豊島与志雄
からのことをいろいろ尋ねられましたが、彼はもう石になってしまっていましたので、何
一つ口を利《き》くことができませんでした。それで、不思議な魔法めいた術のことも、....
「つづれ烏羽玉」より 著者:林不忘
は安と肩をならべて、黙りこくって歩いて行く。 話は途みちするといったくせに、何
一つ口火を切らないうちに、二人は柳原の火除《ひよけ》御用地へ出てしまった。すると....
「中毒」より 著者:織田作之助
仁丹を買うためにパトロンを作った彼女は、煙草も酒も飲まず、酒場のボックスでは果物
一つ口にしない行儀のよさが、吉田の学生街のへんに気取ったけちくさいアカデミックな....
「子規居士と余」より 著者:高浜虚子
な駄菓子を一山持って来た。居士は、 「おたべや。」と言ってそれを余に勧めて自分も
一つ口に入れた。居士は非常に興奮しているようであったが余はどういうものだか極めて....
「早耳三次捕物聞書」より 著者:林不忘
だらい》から引き上げたようにびしょぬれなのだ。しかもぞっとするような蒼い顔で、何
一つ口をきかずに、同じ酒を同じ徳利へ入れさせて、そいつを眼八分に持って、ほとんど....