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一入
「一入〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
一入の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
した女からばかり聞かれるような甘たるい親しさがこもっていた。岡の肩は感激のために
一入《ひとしお》震えた。頓《とみ》には返事もし得ないでいたようだったが、やがて臆....
「或る女」より 著者:有島武郎
に知りながら、愛子のほうは泣き顔を見せるのが気まりが悪いふうで、振り向きもせずに
一入《ひとしお》うなだれてしまったが、貞世のほうは葉子の姿を一目見るなり、はねる....
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
婦きりになると二人はまた別々になってせっせと働き出した。日が傾きはじめると寒さは
一入《ひとしお》に募って来た。汗になった所々は氷るように冷たかった。仁右衛門はし....
「地球発狂事件」より 著者:海野十三
機で警戒せられていたし、海面は護衛の水上艦艇にて、海中は潜水艦が五隻も繰出されて
一入《ひとしお》、警戒は厳重であった。 留守組の観測班員は、捕えた気象水温その....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
リボンの色が、蝶々の翼薄黄色に、ちらちらと先ず映って、矢車を挿込むと、五彩の露は
一入である。 「ここに置かして頂戴よ。まあ、お酒の香がしてねえ、」と手を放すと、....
「春昼」より 著者:泉鏡花
手拭にも、襷にも、前垂にも、織っていたその機の色にも、聊もこの色のなかっただけ、
一入鮮麗に明瞭に、脳中に描き出された。 勿論、描いた人物を判然と浮出させようと....
「東京要塞」より 著者:海野十三
組んで建てていただくつもりでございます」 などと挨拶放送をやって、全国民をまた
一入感激させたのであった。 その忠魂記念塔は、今ではS公園内に天空を摩して毅然....
「死剣と生縄」より 著者:江見水蔭
袷を裾短かに着て、袴は穿かず、鉄扇を手に持つばかり。斯うすると竜次郎の男振りは、
一入目立って光るのであった。 「途中でも女と道連れになんか成らないようにして下さ....
「悪因縁の怨」より 著者:江見水蔭
の合せ目からチラと見える胸元は、磨ける白玉の艶あるに似たり。それに髪の濃いのが、
一入女振を上げて見せて、無雑作の櫛巻が、勿体無いのであった。 若殿は恍惚として....
「京のその頃」より 著者:上村松園
る女の風などにしても、その頃はまだどっちかと言えば徳川時代の面影を半ばは残して、
一入懐かしいものがあった。 この間帝展に出品した「母子」は、その頃への私の思い....
「四条通附近」より 著者:上村松園
どに見る人たちの風にも、あの頃はどちらかというと、江戸時代の面影が半ば残っていて
一入なつかしいものがあった。 先年(昭和九年)帝展に出した「母子」は、あの頃へ....
「雪柳」より 著者:泉鏡花
凝らした大名の下屋敷にも、かばかりの普請はなかろう。折から鶏の声の遠く聞えるのが
一入里離れた思いがする……時しも家の内遠い処に、何となく水の音……いや湯殿で加減....
「昔尊く」より 著者:上村松園
その上きわめて速やかに仕事も綺麗に仕上がると申しますもの、随って出来ましたものも
一入活きてくるようでございます。まことに何かと我身にひいてのみ申したようでござい....
「活人形」より 著者:泉鏡花
してこうして、と独りほくほく頷きて、帳場に坐りて脂下り、婦人を窺う曲者などの、万
一入り来ることもやあらむと、内外に心を配りいる。 勝手を働く女房が、用事|了う....
「狐」より 著者:岡本かの子
でもその美女のままでいて呉れ。 ――お恥かしうございます。 ――はにかむところは
一入艶だ。 ――おれは、君ほど観照してる余裕はない。女狐さん用ならさっさと話して....