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一寸先
「一寸先〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
一寸先の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「川中島合戦」より 著者:菊池寛
南方小森に於て妻女山から来るべき敵に備えた。時に川中島は前夜細雨があったためか、
一寸先もわからぬ濃霧である。 『川中島五度合戦記』に「越後陣所ヨリ草刈ドモ二三十....
「支倉事件」より 著者:甲賀三郎
やらぬ二月半の夜更け、空はカラリと晴れて蒼白い星が所在なげに瞬いていたが、物蔭は
一寸先も見えない闇だった。写真館の表は軍装いかめしい将軍の大型の写真と、数年前に....
「工場細胞」より 著者:小林多喜二
の悪い気持のまゝ歩いて行った。 橋の上へ来たとき、彼が気付いた。――彼はお君を
一寸先きに行って貰って、服のポケットを全部調べた。内ポケットの中から、四つに折っ....
「谷より峰へ峰より谷へ」より 著者:小島烏水
いものであった。私は頭の中まで、ぼんやりと膜が下りたようになった、眼鏡は曇って、
一寸先を見透すのさえ大なる努力を要する、外套のおもてには、雨が糸筋を引いていい加....
「風流仏」より 著者:幸田露伴
の事にあらず、吼立る天津風、山山鳴動して峰の雪、梢の雪、谷の雪、一斉に舞立つ折は
一寸先見え難く、瞬間に路を埋め、脛を埋め、鼻の孔まで粉雪吹込んで水に溺れしよりま....
「火星兵団」より 著者:海野十三
。そんならいいが……」
と、父親も、やっと安心の色を見せた。
だが、世の中は
一寸先は闇である。思いがけないどんなことが、
一寸先に、時間の来るのを待っているか....
「星女郎」より 著者:泉鏡花
かとも疑われる。 が、往来止だで済ましてはいられぬ。もしその意味に従えば、……
一寸先へも出られぬのである。 もっとも時|経ったか、竹も古びて、縄も中弛みがし....
「フランダースの犬」より 著者:菊池寛
う、そんなことを百度以上もくりかえしつつ、パトラッシュははしりつづけました。この
一寸先も見えない吹雪の夜を、饑えと寒さによろめきながらパトラッシュは、ただ主人を....
「河童小僧」より 著者:岡本綺堂
雨の夜であるから、水の音と雨の音の外には物の音も聞えず、往来も絶えたる戌の刻頃、
一寸先も見え分かぬ闇を辿って、右のドンドンの畔へ差掛ると、自分より二三間先に小さ....
「行雲流水」より 著者:坂口安吾
なったんだろう。オカミサンに限って、あの病気にかからないと思っていたが、世の中は
一寸先がわからないものだ」 「バカにしちゃ、いけないよ。あんなバカ野郎が一束クビ....
「水鳥亭」より 著者:坂口安吾
は黒では有りえないのです」 「公式通りには、いきません。なぜなら、戦争ですから。
一寸先はヤミ、ということを、あなたは忘れてらッしゃるのです」 「あなたは、又、一....
「絶景万国博覧会」より 著者:小栗虫太郎
気味に動かして、声を落した。 「所が杉江さん、人の世の回り舞台なんてものは、全く
一寸先が判らないものでね。その時『釘抜』が始められてから間もなくのこと、ぴたりと....
「名人地獄」より 著者:国枝史郎
して来た。篠突くような暴雨であった。雨脚が乱れて濛気となり、その濛気が船を包み、
一寸先も見えなくなった。轟々という凄じい音は、巻立ち狂う波の音で、キキー、キキー....
「取舵」より 著者:泉鏡花
れが名人となると、肚で漕ぐッ。これは大いにそうだろう。沖で暴風でも吃ッた時には、
一寸先は闇だ。そういう場合には名人は肚で漕ぐから確さ。 生憎この近眼だから、顔....
「一日一筆」より 著者:岡本綺堂
に見えない運命の頸環が附いているのであろうが、人も知らず、我も知らず、いわゆる「
一寸先は闇」の世を、何れも面白そうに飛び廻っているのである。我々もこうして暢気に....