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一寸足
「一寸足〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
一寸足の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「三郎爺」より 著者:宮本百合子
くらいのことで済んだのは、何しろ仕合わせであった。 赤いお月様に右の手の長さを
一寸足らず取られた以外、彼は死なせたくても死なないような丈夫な子に育った。大きな....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
それを逆さにふると、一つの小箱が飛び出しました。小箱の大きさ全長が一寸五分、幅が
一寸足らず、関守氏が拾い上げて見ると、「下方屋」と書いてある。がんりきが受取って....
「岡本一平論」より 著者:岡本かの子
は、毎朝氏の掃除にはなりますが、書籍や、作りかけの仕事などが、雑然混然として居て
一寸足の踏み所も無い様です。一隅には、座蒲団を何枚も折りかさねた側に香立てを据え....
「葦笛(一幕)」より 著者:宮本百合子
って下され。今もお主の噂をして居ったのじゃそこにソレ、花が咲いてござるワ、そこに
一寸足をのして行っても大した時はつぶれませぬじゃ、そうなされ。 第一の精霊 ほん....
「獄中への手紙」より 著者:宮本百合子
八どまりの有様です。このようになおりかかって来ると傷口の大小が決定的に影響して、
一寸足らずの傷であるありがた味がよくわかります。傷そのものの不便さはもう殆ど感じ....
「獄中への手紙」より 著者:宮本百合子
も出来たしなおしてくれと云われ、それは千円もかかりしかも命は五年というのでそれに
一寸足してホールゲールというのを買ってやって、国君はピアノと云えばこちらへ来る話....
「囚われ」より 著者:豊島与志雄
凍って流れた。 「この頃富子さんはどうかなすったのじゃありませんか。」 恒雄は
一寸足を止めて孝太郎の方を見た。それからまた眼を地面に落して歩き出した。 「何だ....
「生あらば」より 著者:豊島与志雄
と、初めて一日のことが顧みられた。 空を仰ぐともはや日脚が西に傾いていた。彼は
一寸足を止めて、飢えたる犬のようにあたりをじろりと見廻したが、また急に羽島さんの....
「二つの途」より 著者:豊島与志雄
い恐怖に震え上った。彼女は両手を握り合して、後退りしながら室を出て行った。入口で
一寸足を止めた。木下は頭を垂れて、黙り込んでいた。彼女は急に身を翻して出て行った....
「反抗」より 著者:豊島与志雄
づき難い冷たさを持っていた。そして彼女は余り口を利かなかった。獣や鳥の檻の前を、
一寸足を止めては先へ先へと通りすぎた。周平と隆吉とは後れがちになった。活動を見て....
「電車停留場」より 著者:豊島与志雄
横顔を見ると、太い眉根を震わして両の拳を握りしめた。野口昌作はその気配を感じて、
一寸足を止めながら、ちらと横目を注いだ。 「待て!」と男は叫んだ。 声の調子の....
「或る男の手記」より 著者:豊島与志雄
中には余り人はいなかった。杉の木立のほろろ寒い下蔭にはいって暫く行った時、光子は
一寸足を止めてあたりを見廻したが、今度はゆっくりと歩き出しながら云った。 「私や....
「都会の幽気」より 著者:豊島与志雄
に雨戸も閉めなく、木格子の中の煤けた障子の紙に、淡く電燈の光りがさしていた。私は
一寸足を止めて眺めやった。すると全く思いがけなく、鬢の毛を少しほつらした女の頭が....
「田舎者」より 著者:豊島与志雄
を見ればすぐに分る、というのだった。「ドラ鈴」は扉を押して一歩ふみこむと、そこに
一寸足をとめて、自分の家だと云わんばかりの落付いた微笑を浮べ、室の中をじろりと見....
「別れの辞」より 著者:豊島与志雄
持は嬉しいが、もう間に合うまいよ。」 「え、間に合わないんですって。」 宮崎は
一寸足を止めて、島村を見つめた。島村は振向きもせずに、歩き続けた。 「何事にも時....