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一張
「一張〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
一張の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「温泉だより」より 著者:芥川竜之介
猫《からすねこ》を飼っていました。ある日その「三太」が「青ペン」のお上《かみ》の
一張羅《いっちょうら》の上へ粗忽《そそう》をしたのです。ところが「青ペン」のお上....
「籠釣瓶」より 著者:岡本綺堂
束の稽古日をはずす訳にもゆかないので、栄之丞はいつもよりも早目に夕飯をしまって、
一張羅《いっちょうら》の黒紬《くろつむぎ》の羽織を引っ掛けた。田圃は寒かろうと古....
「水害雑録」より 著者:伊藤左千夫
か。 破壊後の生活は、総ての事が混乱している。思慮も考察も混乱している。精神の
一張一緩ももとより混乱を免れない。 自分は一日大道を闊歩しつつ、突然として思い....
「去年」より 著者:伊藤左千夫
価にかかった。一時四十分ばかりで評価がすむとまったく夜になった。警官連はひとりに
一張ずつことごとく提灯を持って立った。消毒の人夫は、飼料の残品から、その他牛舎に....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
状授与式の日は勿論であるが、定期試験の当日も盛装して出るのが習いで、わたしなども
一張羅の紋付の羽織を着て、よそ行きの袴をはいて行った。それは試験というものを一種....
「雷」より 著者:海野十三
小一時間経った後のこと、松吉はまだ少しフラフラする足を踏みしめながら、服装だけは
一張羅の仕事着をキチンと身につけて、恐る恐る北鳴の宿に伺候した。 「オイ、本当に....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
に矢の刺っただけは新粉屋の看板より念入なり。一面藤の花に、蝶々まで同じ絵を彩った
一張の紙幕を、船板塀の木戸口に渡して掛けた。正面前の処へ、破筵を三枚ばかり、じと....
「唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
やつにも似ている……こりゃ、もし、電信柱で。 蔭に隠れて見えねえけれど、そこに
一張天幕があります。何だと言うと、火事で焼けたがために、仮ごしらえの電信局で、温....
「第二菎蒻本」より 著者:泉鏡花
ようにされて、染次は悄々と次に出た。……組合の気脉が通って、待合の女房も、抱主が
一張羅を着飾らせた、損を知って、そんなに手荒にするのであろう、ああ。 ....
「白金之絵図」より 著者:泉鏡花
処に、以前は草鞋でも振ら下げて売ったろう。葭簀張ながら二坪ばかり囲を取った茶店が
一張。片側に立樹の茂った空地の森を風情にして、如法の婆さんが煮ばなを商う。これは....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
あわれだ、しかも借りものだと言ったっけかな。」 「春着に辛うじて算段した、苦生の
一張羅さ。」 「苦生?……」 「知ってるじゃないか、月府玄蝉、弁持十二。」 「好....
「売春婦リゼット」より 著者:岡本かの子
婆さんとおいぼれはとらないという性根であった。その性根で用意した祭の踊に行く時の
一張羅を二人はひっぱって来た。白いものも洗濯したてを奮発して来た。 三人はそこ....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
人がまた、血を見ると癲癇を起すくらい臆病だからね。や、慌ててら、慌ててら、それに
一張羅だ、堪ったもんじゃあねえ。躍ってやあがる、畜生、おもしれえ!」とばかりで雨....
「春昼後刻」より 著者:泉鏡花
。」 錦の帯を解いた様な、媚めかしい草の上、雨のあとの薄霞、山の裾に靉靆く中に
一張の紫大きさ月輪の如く、はた菫の花束に似たるあり。紫羅傘と書いていちはちの花、....
「葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
からよ。」 緋鹿子の上へ着たのを見て、 「待っせえ、あいにく襷がねえ、私がこの
一張羅の三尺じゃあ間に合うめえ! と、可かろう、合したものの上へ〆めるんだ、濡れ....