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一方口
「一方口〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
一方口の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
うんです。もしあなたが誤解の中にいるんなら聞かせてください。僕はこんな重大な事を
一方口《いっぽうぐち》で判断したくはありませんから」
と話を結んで古藤は悲しい....
「自転車日記」より 著者:夏目漱石
して操縦すでに自由ならず、ただ前へ出られるばかりと思いたまえ、しかるに出られべき
一方口が突然|塞《ふさが》ったと思いたまえ、すなわち横ぎりにかかる塗炭《とたん》....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
っていた番町方面の避難者は、そこも火の粉がふりかかって来るのにうろたえて、さらに
一方口の四谷方面にその逃げ路を求めようとするらしく、人なだれを打って押し寄せてく....
「海の使者」より 著者:泉鏡花
に滝津瀬、水筋の高くなり行く川面から灌ぎ込むのが、一揉み揉んで、どうと落ちる……
一方口のはけ路なれば、橋の下は颯々と瀬になって、畦に突き当たって渦を巻くと、其処....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
めてやる、この眼が承知しない」 というのは、今のはただ耳だけの判断に過ぎない。
一方口を信ずるは、男子の為さざるところだから、この上は眼に訴えて、のっぴきさせず....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
りである、と番頭は、そぞろ荒涼の思いに堪えられなかったが、その時自分の入って来た
一方口が俄《にわ》かにけたたましくなったのは、思いがけない人がやって来たのではな....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
っているだけに、お銀様の怖れが一層深くないということはありません。 この土蔵は
一方口である。前に火をつけられると後ろへ逃げることができない。横にも縦にも、蹴破....
「星女郎」より 著者:泉鏡花
蔽い被さっていようというんで、それこそ猿が宙返りでもしなければ上れそうにもなし、
一方口はその長土間でしょう、――今更|遁出そうッたって隙があるんじゃなし、また遁....
「後の業平文治」より 著者:三遊亭円朝
来るというのでありますから、文治とは好一対の美夫婦であります。頃は向島の花見時、
一方口の枕橋近辺に其れとなく見張って居りますので、往来の人は立止りますくらい、文....
「南国太平記」より 著者:直木三十五
おいた三百万両の非常準備金がある。それから、江戸は四方から攻めかかれるが、当国は
一方口じゃ。そして、天子を奉じて、錦旗を翻すなら、戦はそれまでであろう。斉彬公は....
「幕末維新懐古談」より 著者:高村光雲
逃げ口の吾妻橋方面へと逃げ出そうと急っている。片方は大河で遮られているから、この
一方口へ逃れるほかには逃げ道はなく、まるで袋の鼠といった形……振り返れば、諏訪町....
「火に追われて」より 著者:岡本綺堂
っていた番町方面の避難者は、そこにも火の粉がふりかかって来るのにうろたえて、更に
一方口の四谷方面にその逃げ路を求めようとするらしく、人なだれを打って押寄せてくる....
「雪女」より 著者:小泉八雲
を僥倖に思いながら。小屋には火鉢はなかった。火をたくべき場処もなかった。窓のない
一方口の、二畳敷の小屋であった。茂作と巳之吉は戸をしめて、蓑をきて、休息するため....
「狐」より 著者:永井荷風
狐ッて奴は、穴一つじゃねえ。きつと何処にか抜穴《ねけあな》を付けとくって云うぜ。
一方口《いっぽうぐち》ばかし堅《かた》めたって、知らねえ中《うち》に、裏口からお....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
しとど霑れながら又川を渡ると、左手から小沢が落ち合って少し許の平地に、茅を束ねた
一方口の小さな小屋が古代の穴居人の跡のように十五、六かたまっている。炭の中継場で....