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「一樹〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

一樹の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
玉藻の前」より 著者:岡本綺堂
も馴れて来た。この当時の殿上人が錦を誇る紅葉《もみじ》のなかで、彼は飾りなき松の一樹と見られていたのが、いつか時雨《しぐれ》に染められて、彼もまた次第に華美を好....
茶の本」より 著者:岡倉覚三
うにするものではない。」と言ってその茶人はしかった。こう言って利休は庭におり立ち一樹を揺すって、庭一面に秋の錦を片々と黄金、紅の木の葉を散りしかせた。利休の求め....
母子叙情」より 著者:岡本かの子
熱苦しかった悶えを想い出した。 (山に来て二十日経ぬれどあたたかくわれをいたはる一樹だになし――娘時代のかの女の歌より)精神から見放しにされたまま、物足りなさに....
雛妓」より 著者:岡本かの子
界の一ときを経歴したあと、芝の白金でも、今里でも、隠逸の形を取った崖下であるとか一樹の蔭であるとかいう位置の家を選んだ。洞窟を出た人が急に陽の目に当るときは眼を....
神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
た。 「昨夜以来のご歓待なんとお礼を申してよいやら」改めて庄三郎は礼を云う。 「一樹の蔭一河の流れ、袖振り合うも他生の縁とやら、何んのお礼に及びましょうぞ」 ....
菊模様皿山奇談」より 著者:三遊亭円朝
、斯かる山中に路に踏み迷い、且此の通り雨天になり、日は暮れ、誠に難渋を致します、一樹の蔭を頼むと云って音ずれると、奥から出て来た」 ○「へえー肋骨が出て、歯のま....
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
、其向うは草叢を拓いて牛馬舎一棟、人の住む矮い草舎が一棟。道側に大きなヤチダモが一樹黄葉して秋雨を滴らして居る。 駅逓東南隅の八畳が翁の居間である。硝子窓から....
小説 不如帰 」より 著者:徳冨蘆花
に玻璃窓にさし込みつ。山は朝霧なお白けれど、秋の空はすでに蒼々と澄み渡りて、窓前一樹染むるがごとく紅なる桜の梢をあざやかに襯し出しぬ。梢に両三羽の小鳥あり、相語....
みさごの鮨」より 著者:泉鏡花
る。が、庭は赤土に薄日がさして、塔形の高い石燈籠に、苔の真蒼なさびがある。ここに一樹、思うままの松の枝ぶりが、飛石に影を沈めて、颯と渡る風に静寂な水の響を流す。....
木の子説法」より 著者:泉鏡花
三もんがほどの価値をお認めになって、口惜い事はあるまいと思う。 つれは、毛利|一樹、という画工さんで、多分、挿画家協会会員の中に、芳名が列っていようと思う。私....
縷紅新草」より 著者:泉鏡花
月には幽けく、冥々として顕われる。中でも裏山の峰に近い、この寺の墓場の丘の頂に、一樹、榎の大木が聳えて、その梢に掛ける高燈籠が、市街の広場、辻、小路。池、沼のほ....
怨霊借用」より 著者:泉鏡花
小高い皿地の中窪みに、垣も、折戸もない、破屋が一軒あった。 出た、山の端に松が一樹。幹のやさしい、そこの見晴しで、ちょっと下に待つ人を見ようと思ったが、上って....
」より 著者:岡本かの子
て中背の桜が何十本か整列している。淡紅満開の花の盛り上る梢は、一斉に連なり合って一樹の区切りがつき難い。長く立て廻した花の層だ、層が厚い部分は自然と幽な陰をつく....
ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
、草の蓬に包んだ、塚ともいおう。塔婆、石碑の影もない、墓の根に、ただ丘に添って、一樹の記念の松が、霧を含んで立っている。 笠形の枝の蔭に、鳥冠が、ちらちらと草....
上野」より 著者:永井荷風
昨年の春わたくしは森春濤の墓を掃《はら》いに日暮里の経王寺に赴いた時、その門内に一樹の老桜の、幹は半から摧《くだ》かれていながら猶全く枯死せず、細い若枝の尖《さ....