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一滴
「一滴〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
一滴の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
ようになってしまった。どこもかしこも、炎天のほこりを浴びたこの町の辻で、わずかに
一滴の湿りを点じたものがあるとすれば、それはこの蛇《ながむし》の切れ口から出た、....
「大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
の乳を吸ったことのない少年だった。元来体の弱かった母は一粒種の彼を産んだ後さえ、
一滴の乳も与えなかった。のみならず乳母を養うことも貧しい彼の家の生計には出来ない....
「尼提」より 著者:芥川竜之介
する、海よりも深い憐憫《れんびん》の情はその青紺色《せいこんしょく》の目の中にも
一滴《いってき》の涙さえ浮べさせたのである。こう言う大慈悲心を動かした如来はたち....
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
一軒見つけて、仕度|旁々《かたがた》はいったそうです。もっとも今日は謹んで、酒は
一滴も口にせず、妙に胸が閊《つか》えるのを、やっと冷麦《ひやむぎ》を一つ平げて、....
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
。その狂暴を募らせるように烈《はげ》しい盛夏が来た。春先きの長雨を償うように雨は
一滴も降らなかった。秋に収穫すべき作物は裏葉が片端《かたっぱし》から黄色に変った....
「小さき者へ」より 著者:有島武郎
有物だ。それは今は乾いてしまった。大空をわたる雲の一片となっているか、谷河の水の
一滴となっているか、太洋《たいよう》の泡《あわ》の一つとなっているか、又は思いが....
「星座」より 著者:有島武郎
ども、それだからといって渡瀬さんを卑《いや》しむ気にはなれなかった。父の時代から
一滴の酒も入れない家庭に育ちながら、そして母も自分も禁酒会の会員でありながら、他....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
申しても宜しいのです。 どうぞ、その、遍く御施しになろうという如露の水を一雫、
一滴で可うございます、私の方へお配分なすってくださるわけには参りませんか。 御....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
年所をかけて自己の中から築き上げたものではなかろうか。私の個性もまたその河の水の
一滴だ。その水の押し流れる力は私を拉して何処かに押し流して行く。或る時には私は岸....
「伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
声を立てたほどである。 雫を切ると、雫まで芬と臭う。たとえば貴重なる香水の薫の
一滴の散るように、洗えば洗うほど流せば流すほど香が広がる。……二三度、四五度、繰....
「開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
山の石段の真中で目を瞑ろうとしたのである。 上へも、下へも、身動きが出来ない。
一滴の露、水がなかった。 酒さえのまねば、そうもなるまい。故郷も家も、くるくる....
「世界怪談名作集」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
楽主義者がラザルスの眼をながめたとき、彼の歓楽は永劫に終りをつげてしまった。彼は
一滴の酒も口にしないのに、その余生をまったく酔いどれのように送った。そうして、酒....
「照葉狂言」より 著者:泉鏡花
声して、 (親ちゃん、) とばかりはたと扇子落して見返りし、凄艶なる目の中に、
一滴の涙宿したり。皆泣伏しぬ。迎の俥来たれば乗りて出でき。 可愛き児の、何とて....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
「ちょいと、」 「ええ、」 「あれ、」といって振返された手を押えた。指の間には紅
一滴、見る見る長くなって、手首へ掛けて糸を引いて血が流れた。 「姉さん、」 「ど....
「白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
里が露に濡れている。 「妻の婚礼道具ですがね、里の父が飲酒家だからですかな。僕は
一滴もいけますまい、妻はのまず。……おおん、あの、朝顔以来、内でこれの出たのはそ....