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一粒
「一粒〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
一粒の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
二 牛乳
信輔は全然母の乳を吸ったことのない少年だった。元来体の弱かった母は
一粒種の彼を産んだ後さえ、一滴の乳も与えなかった。のみならず乳母を養うことも貧し....
「侏儒の言葉」より 著者:芥川竜之介
侏儒《しゅじゅ》でございます。どうかわたしの願いをおかなえ下さいまし。
どうか
一粒の米すらない程、貧乏にして下さいますな。どうか又|熊掌《ゆうしょう》にさえ飽....
「二、三羽――十二、三羽」より 著者:泉鏡花
粒を嘴から含めて遣る。……食べても強請る。ふくめつつ、後ねだりをするのを機掛に、
一粒|銜えて、お母さんは塀の上――(椿の枝下で茲にお飯が置いてある)――其処から....
「妖術」より 著者:泉鏡花
了簡を廻らしながら、いつも乗って帰る処は忘れないで、件の三丁目に彳みつつ、時々、
一粒ぐらいぼつりと落ちるのを、洋傘の用意もないに、気にもしないで、来るものは拒ま....
「海異記」より 著者:泉鏡花
二十二三。 去年ちょうど今時分、秋のはじめが初産で、お浜といえば砂さえ、敷妙の
一粒種。日あたりの納戸に据えた枕蚊帳の蒼き中に、昼の蛍の光なく、すやすやと寐入っ....
「七宝の柱」より 著者:泉鏡花
がかかって、風に軽く吹かれながら、きらきらと輝くのを、不思議なる塵よ、と見れば、
一粒の金粉の落ちて輝くのであった。 さて経蔵を見よ。また弥が上に可懐い。 羽....
「木の子説法」より 著者:泉鏡花
この使の小僧ですが、二日ばかりというもの、かたまったものは、漬菜の切れはし、黒豆
一粒入っていません。ほんとうのひもじさは、話では言切れない、あなた方の腹がすいた....
「半島一奇抄」より 著者:泉鏡花
躾ですが、御手洗で清めた指で触って見ました。冷い事、氷のようです。湧いて響くのが
一粒ずつ、掌に玉を拾うそうに思われましたよ。 あとへ引返して、すぐ宮前の通から....
「開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
ごれて、しなびた包、おちへ来て一霜くらった、大角豆のようなのを嬉しそうに開けて、
一粒々々、根附だ、玉だ、緒〆だと、むかしから伝われば、道楽でためた秘蔵の小まもの....
「琵琶伝」より 著者:泉鏡花
うど三晩の間、むこうの麻畑の中に隠れておいでなすって、めしあがるものといっちゃ、
一粒の御飯もなし、内に居てさえひどいものを、ま、蚊や蚋でどんなだろうねえ。脱営を....
「政談十二社」より 著者:泉鏡花
神でも仏でも、尊い手をお延ばし下すって、早く引上げてやって頂かねば、見る中にも砂
一粒ずつ地の下へ崩れてお米は貴方、旦那様。 奈落の底までも落ちて参りますような....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
名は袈裟代、これは加納家から嫁いでまいりました。両親の間には男の児はなく、たった
一粒種の女の児があったのみで、それが私なのでございます。従って私は小供の時から随....
「親ごころ」より 著者:秋田滋
は夜も日も明けないと云う可愛がり方。そして、車大工とその女房は、交わるがわるその
一粒種を手にとって、撫でたり擦ったりしていた。 その子供が五つになった時のこと....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
絞って流落ちた。 ばらばらばら! 火の粉かと見ると、こはいかに、大粒な雨が、
一粒ずつ、粗く、疎に、巨石の面にかかって、ぱッと鼓草の花の散るように濡れたと思う....
「三枚続」より 著者:泉鏡花
く、要害堅固に礎を立てた一城の主人といっても可い、深川木場の材木問屋、勝山重助の
一粒種。汗のある手は当てない秘蔵で、芽の出づる頃より、ふた葉の頃より、枝を撓めず....