一粒種[語句情報] » 一粒種

「一粒種〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

一粒種の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
二 牛乳 信輔は全然母の乳を吸ったことのない少年だった。元来体の弱かった母は一粒種の彼を産んだ後さえ、一滴の乳も与えなかった。のみならず乳母を養うことも貧し....
海異記」より 著者:泉鏡花
二十二三。 去年ちょうど今時分、秋のはじめが初産で、お浜といえば砂さえ、敷妙の一粒種。日あたりの納戸に据えた枕蚊帳の蒼き中に、昼の蛍の光なく、すやすやと寐入っ....
吉原新話」より 著者:泉鏡花
を殺しますに、兄弟の、身代りの見境があるかいの。魚も虫も同様での。親があるやら、一粒種やら、可愛いの、いとしいの、分隔てをめされますかの。 弱いものいうたら、....
寒の夜晴れ」より 著者:大阪圭吉
。 わけても微笑ましいのは、家庭に於ける三四郎だった。どんなに彼が、美しい妻と一粒種の子供を愛していたか、それは女生徒達の、弥次気分も通り越した尊敬と羨望に現....
河明り」より 著者:岡本かの子
て、小説なんかには持って来いじゃありませんか」 この叔母は、私の生家の直系では一粒種の私が、結婚を避け、文筆を執ることを散々嘆いた末、遂に私の意志の曲げ難いの....
神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
の右の眼を刳り抜いた。 するとまた一軒の若夫婦の家では、荒淫に耽っている間に、一粒種の二つになる子が、川へ落ちて死んでしまった。 おりから東の関門をくぐり、....
八ヶ嶽の魔神」より 著者:国枝史郎
来診」 こう云って北山の帰った後は火の消えたように寂しくなった。 二人の中の一粒種、十一歳の可愛い盛り、葉之助は大熱に浮かされながら昏々として眠っている。 ....
爆薬の花籠」より 著者:海野十三
であったことをはっきりと悟ったのである。そして自分が、あのやさしい彦田道子夫人の一粒種であることを知ったのであった。多分このお守袋は、彼女がミマツ団員の誰かに拾....
縷紅新草」より 著者:泉鏡花
ら起った事です。千五百石の女※ですが、初路さん、お妾腹だったんですって。それでも一粒種、いい月日の下に、生れなすったんですけれど、廃藩以来、ほどなく、お邸は退転....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
ほど前に死んで、今は女あるじのお寅が一家の締めくくりをしていた。お菊は夫が形見の一粒種で今年十八の美しい娘であった。店では重蔵という大番頭のほかに、清次郎と藤吉....
霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
名は袈裟代、これは加納家から嫁いでまいりました。両親の間には男の児はなく、たった一粒種の女の児があったのみで、それが私なのでございます。従って私は小供の時から随....
曽我の暴れん坊」より 著者:坂口安吾
、大磯の長者もその娘ざかりのころ伏見の大納言を客にとって生んだ子が虎なのである。一粒種の虎は非常に大事に育てられ、一通りの学問も和歌も、琴笛その他の楽器も遊芸全....
血液型殺人事件」より 著者:甲賀三郎
ると、博士と夫人がこういう外観的の冷い仲になったのは、十年ばかり以前に夫婦の間の一粒種だった男の子が、十いくつかで死んでからだともいい、又、それは結婚すると間も....
親ごころ」より 著者:秋田滋
は夜も日も明けないと云う可愛がり方。そして、車大工とその女房は、交わるがわるその一粒種を手にとって、撫でたり擦ったりしていた。 その子供が五つになった時のこと....
三枚続」より 著者:泉鏡花
く、要害堅固に礎を立てた一城の主人といっても可い、深川木場の材木問屋、勝山重助の一粒種。汗のある手は当てない秘蔵で、芽の出づる頃より、ふた葉の頃より、枝を撓めず....