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一脈
「一脈〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
一脈の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
のくま》の爺《おじ》と懸想された猪熊のばばと、――太郎は、おのずから自分の顔に、
一脈の微笑が浮かんで来るのを感じたのである。
「そのうちに、わしはおばばに情人《....
「或日の大石内蔵助」より 著者:芥川竜之介
ぼうてき》な考えは、少しもはいって来なかった。彼はただ、春風《しゅんぷう》の底に
一脈の氷冷《ひれい》の気を感じて、何となく不愉快になっただけである。
しかし、....
「深夜の市長」より 著者:海野十三
味ではなかったのだ。事情はよく分らないながら、彼と本物の市長との間には、とにかく
一脈の縁の水路が続いていたのだった。――僕は跪いて「市長」の手を取ろうとすると、....
「渾沌未分」より 著者:岡本かの子
ゆくのだった。そしてだんだん虚脱に似た無批判になってゆく心境のなかにいつか涼しい
一脈の境界が透って来た。父に聞いた九淵のはなし、友が訳した希臘の狂詩――水中に潜....
「古狢」より 著者:泉鏡花
うですね。」 と家内も云った。少し遠慮して、間をおいて、三人で斉しく振返ると、
一脈の紅塵、軽く花片を乗せながら、うしろ姿を送って行く。……その娘も、町の三辻の....
「転機」より 著者:伊藤野枝
それは何という荒涼とした景色だったろう! 遙かな地平の果てに、雪をいただいた
一脈の山々がちぢこまって見える他は、目を遮るものとては何物もない、ただ一面の茫漠....
「琵琶伝」より 著者:泉鏡花
たる鉄瓶の湯気のみ薄く立のぼりて、湯の沸る音|静なり。折から彼方より襖を明けつ。
一脈の風の襲入りて、立昇る湯気の靡くと同時に、陰々たるこの書斎をば真白き顔の覗き....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
その楽のために造られた階梯であるように考えるらしく、絶望した窮厄の中に縷々として
一脈の霊光を認めたごとく、嬉しげに且つ快げにいって莞爾とした。いまわの際に少年は....
「故郷」より 著者:井上紅梅
わたしは遂に閏土と隔絶してこの位置まで来てしまった。けれど、わたしの後輩はやはり
一脈の気を通わしているではないか。宏兒は水生を思念しているではないか。わたしは彼....
「佐藤春夫氏の事」より 著者:芥川竜之介
るものなきにあらず、哲学を寓するもの亦なきにあらざれど、その思想を彩るものは常に
一脈の詩情なり。故に佐藤はその詩情を満足せしむる限り、乃木大将を崇拝する事を辞せ....
「墓」より 著者:秋田滋
る、――こう思われてならないのでした。彼女はその身うちに何かしらわたくしの精神と
一脈相通じるものを有っていたのであります。 彼女は、わたくしの魂が放った「おう....
「豆腐買い」より 著者:岡本かの子
屋の角を出て広い市の電車通りに出ても日本の都特有の不安な気持ちはあの煙のにおいと
一脈の連絡を持っているように考えられる。不安な気持ちが揺り動かす日本の都会の若さ....
「孟母断機」より 著者:上村松園
刺戟されて筆を執ったものであるが、これは「遊女亀遊」や「税所敦子孝養図」などと、
一脈相通ずる、わたくしの教訓画として、今もって懐かしい作のひとつである。 「その....
「ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
くれたのが、もみじを掛けた袈裟ならず、緋の法衣のごとく※と立った。 水平線上は
一脈|金色である。朱に溶けたその波を、火の鳥のように直線に飛んで、真面に銅像を射....
「欧米各国 政教日記」より 著者:井上円了
るよりほかなし。そもそも一国の独立するゆえんのものは、事物変化の中心に当たりて、
一脈の精神の絡々として持続するところなかるべからず。もしその精神、外形上の事物と....