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一通り
「一通り〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
一通りの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「戯作三昧」より 著者:芥川竜之介
り》と窓からさす朝日の光との中に、糢糊《もこ》として動いている。そのまた騒ぎが、
一通りではない。第一に湯を使う音や桶を動かす音がする。それから話し声や唄の声がす....
「疑惑」より 著者:芥川竜之介
ざわざ推参致したのでございます。いかがでございましょう。御退屈でも私の身の上話を
一通り御聴き取り下さる訳には参りますまいか。」
私は答に躊躇《ちゅうちょ》した....
「鼻」より 著者:芥川竜之介
の茎《くき》のような形をして、四分ばかりの長さにぬけるのである。
やがてこれが
一通りすむと、弟子の僧は、ほっと一息ついたような顔をして、
――もう一度、これ....
「報恩記」より 著者:芥川竜之介
甚内に、こう云う事を頼まれたのでは、手軽に受合う気にもなれますまい。ではとにかく
一通り、事情だけは話して見る事にしましょう。しかしそれには生死を問わず、他言《た....
「邪宗門」より 著者:芥川竜之介
生涯で、たった一度の不思議な出来事を御話し致そうかと存じて居ります。が、その前に
一通り、思いもよらない急な御病気で、大殿様が御薨去《ごこうきょ》になった時の事を....
「開化の良人」より 著者:芥川竜之介
もなく断《ことわ》ってしまうのです。しかもそのまた彼の愛《アムウル》なるものが、
一通りの恋愛とは事変って、随分《ずいぶん》彼の気に入っているような令嬢が現れても....
「袈裟と盛遠」より 著者:芥川竜之介
かけよう。己は果して袈裟を愛しているだろうか。
が、その答をする前に、己はまだ
一通り、嫌《いや》でもこう云ういきさつを思い出す必要がある。――渡辺の橋の供養の....
「奇遇」より 著者:芥川竜之介
意だから、この際君に一切の事情をすっかり打ち明けてしまおうと思う。退屈でもどうか
一通り、その女の話を聞いてくれ給え。
「僕は君が知っている通り、松江《しょうこう....
「黄粱夢」より 著者:芥川竜之介
らしく髭を撫でた。
「では、寵辱《ちょうじょく》の道も窮達《きゅうたつ》の運も、
一通りは味わって来た訳ですね。それは結構な事でした。生きると云う事は、あなたの見....
「葱」より 著者:芥川竜之介
しい。何しろ色が白くって、眼が涼しいから、鼻の先が少し上を向いていても、とにかく
一通りの美人である。それが髪をまん中から割って、忘れな草の簪《かんざし》をさして....
「少年」より 著者:芥川竜之介
さえ出来ぬ満員である。のみならず震災後の東京の道路は自働車を躍《おど》らすことも
一通りではない。保吉はきょうもふだんの通り、ポケットに入れてある本を出した。が、....
「将軍」より 著者:芥川竜之介
げているのだ。」――田口一等卒は身構えながら、こうその叩頭を解釈した。
叩頭が
一通り済んでしまうと、彼等は覚悟をきめたように、冷然と首をさし伸した。田口一等卒....
「俊寛」より 著者:芥川竜之介
将や康頼《やすより》はおれより先に、もう船の側へ駈けつけていたが、この喜びようも
一通りではない。現にあの琉球人なぞは、二人とも毒蛇《どくじゃ》に噛《か》まれた揚....
「忠義」より 著者:芥川竜之介
《けらい》は、驚破《すわ》、殿中に椿事《ちんじ》があったと云うので、立ち騒ぐ事が
一通りでない。何度目付衆が出て、制しても、すぐまた、海嘯《つなみ》のように、押し....
「三つの窓」より 著者:芥川竜之介
紙に目を通していた。手紙は桃色の書簡箋に覚束ないペンの字を並べたものだった。彼は
一通り読んでしまうと、一本の巻煙草に火をつけながら、ちょうど前にいたY中尉にこの....