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一重
「一重〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
一重の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「玄鶴山房」より 著者:芥川竜之介
訛りにいつか彼女の心もちも或気安さを持ち出したのを感じた。同時に又|襖《ふすま》
一重向うに咳《せき》一つしずにいる母のお鳥に何か漠然とした不安も感じた。
「じゃ....
「一夕話」より 著者:芥川竜之介
征伐《まかないせいばつ》の大将で、リヴィングストンの崇拝家で、寒中《かんちゅう》
一重物《ひとえもの》で通した男で、――一言《いちごん》にいえば豪傑《ごうけつ》だ....
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
》さんが、突然かすかな叫び声を洩らした。この家《うち》では台所と云っても、障子|
一重《ひとえ》開けさえすれば、すぐにそこが板の間《ま》だった。
「何? 婆や。」....
「野呂松人形」より 著者:芥川竜之介
うぶ》をたてまわしたものらしい。うす暗い中に、その歩衝《ついたて》と屏風との金が
一重《ひとえ》、燻《いぶ》しをかけたように、重々しく夕闇を破っている。――僕は、....
「西郷隆盛」より 著者:芥川竜之介
かれこれ七八年も前にもなろうか。丁度三月の下旬で、もうそろそろ清水《きよみず》の
一重桜《ひとえざくら》が咲きそうな――と云っても、まだ霙《みぞれ》まじりの雨がふ....
「忠義」より 著者:芥川竜之介
を得ず後《うしろ》からその首をうち落した。うち落したと云っても、喉《のど》の皮|
一重《ひとえ》はのこっている。弥三左衛門は、その首を手にとって、下から検使の役人....
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
葉柳が、窓も蔽うほど枝垂れていますから、瓦にさえ暗い影が落ちて、障子《しょうじ》
一重《ひとえ》隔てた向うには、さもただならない秘密が潜んでいそうな、陰森《いんし....
「或る女」より 著者:有島武郎
自分の身の上を考えていた。いわば悠々《ゆうゆう》閑々と澄み渡った水の隣に、薄紙|
一重《ひとえ》の界《さかい》も置かず、たぎり返って渦《うず》巻き流れる水がある。....
「或る女」より 著者:有島武郎
。それが彼をいっそうさびしく見せた。
三月末の夕方の空はなごやかだった。庭先の
一重《ひとえ》桜のこずえには南に向いたほうに白い花《か》べんがどこからか飛んで来....
「星座」より 著者:有島武郎
る奴だ」というように、柿江の笑いに同じた。
その時尋常四年生の教室――それは壁
一重に廊下を隔てた所にあるのだが――がきゅうに賑やかになって、砂きしみのする引戸....
「唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
ど視て通った私もね、これには足が停りました。 なんと……綺麗な、その翼の上も、
一重敷いて、薄り、白くなりました。この景色に舞台が換って、雪の下から鴛鴦の精霊が....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
。糸七の気早く足へ掛けたバケツの水は、南瓜にしぶいて、ばちゃばちゃ鳴るのに、障子
一重、そこのお京は、気息もしない。はじめからの様子も変だし、消えたのではないか、....
「橋」より 著者:池谷信三郎
がその無数の断面に七色の虹を描きだして、彼女はうっとりと見入っていた。 彼女の
一重瞼をこんなに気高いと思ったことはない。彼女の襟足をこんなに白いと感じたことは....
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
が、板か、壁か明かならず、低いか、高いか、定でないが、何となく暗夜の天まで、布|
一重隔つるものがないように思われたので、やや急心になって引寄せて、袖を見ると、着....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
います……』と申しましたが、人間同志で、枕元で呼びかわすのとは異い、何やらそこに
一重隔てがあるようで、果してこちらの意思が病床の母に通じたか何うかと不安に感じら....