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一顆
「一顆〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
一顆の前後の文節・文章を表示しています。該当する14件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「檸檬」より 著者:梶井基次郎
私は街の上で非常に幸福であった。あんなに執拗《しつこ》かった憂鬱が、そんなものの
一顆《いっか》で紛らされる――あるいは不審なことが、逆説的なほんとうであった。そ....
「足迹」より 著者:徳田秋声
らにしても、当分|足掻きがつかないということだけは確かめられた。 お庄は銀貨を
一顆紙に捻って、傍に出してあった三方の上に置いて、そこを出て来た。出る時、俥で乗....
「津軽の虫の巣」より 著者:宮本百合子
ある。 火花を散らす様にして、赫々《かくかく》と燃え立つ真紅のただ中に置かれた
一顆の青玉は、さながら天外から雫《したた》り落ちた一滴の涙の様に見える。 純粋....
「渋江抽斎」より 著者:森鴎外
田京水の子|瑞長であったからである。 東堂が質に入れたのは、銅仏|一躯と六方印
一顆とであった。銅仏は印度で鋳造した薬師如来で、戴曼公の遺品である。六方印は六面....
「風流仏」より 著者:幸田露伴
して食う甘さ、或は山茶も一時の出花に、長き夜の徒然を慰めて囲い栗の、皮|剥てやる
一顆のなさけ、嬉気に賞翫しながら彼も剥きたるを我に呉るゝおかしさ。実に山里も人情....
「白金之絵図」より 著者:泉鏡花
に、この儀お聞済が願いたい。 口惜や、われら、上根ならば、この、これなる烏瓜|
一顆、ここに一目、令嬢を見ただけにて、秘事の悟も開けましょうに、無念やな、老の眼....
「C先生への手紙」より 著者:宮本百合子
ん。 こちらの婦人の華美と、果を知らぬ奢沢は、美そのものに憧れるのではなくて、
一顆の尊い宝石に代る金を暗示するから厭でございます。 けれども、斯様に、種々の....
「照葉狂言」より 著者:泉鏡花
と思うに二ツ三ツよりぞ多からざりける。 継母はわずかに柿の実二ツくれたり。その
一顆は渋かりき。他の
一顆を味わむとせしに、真紅の色の黒ずみたる、台なきは、虫のつ....
「郷土的味覚」より 著者:寺田寅彦
ような気はしたが、天涯の孤客だからと自分で自分に申し訳を云った。このローマの宿の
一顆の柿の郷土的味覚はいまだに忘れ難いものの一つである。 味覚の追憶などはあま....
「智恵子の半生」より 著者:高村光太郎
あったであろう。その最後の日、死ぬ数時間前に私が持って行ったサンキストのレモンの
一顆を手にした彼女の喜も亦この一筋につながるものであったろう。彼女はそのレモンに....
「植物一日一題」より 著者:牧野富太郎
名鈔)ヌカグリモミヂグリ木高サ五六尺ニ過ズシテ叢生ス房彙《イガ》モ小ナリソノ中ニ
一顆或ハ二三顆アリ形小ナレドモ味優レリ是茅栗ナリ」と書いてある。 貝原|益軒《....
「八犬伝談余」より 著者:内田魯庵
ので、口授ではあるが一字一句に血が惨み出している。その続きに「第九輯百七十七回、
一顆の智玉、途に一騎の驕将を懲らすといふ一段を五行或は四行の大字にものしぬるに字....
「白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
、全舞台に、虫一つ、塵も置かず、世の創の生物に似た鰐口も、その明星に影を重ねて、
一顆の一碧玉を鏤めたようなのが、棟裏に凝って紫の色を籠め、扉に漲って朧なる霞を描....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
瓜に、朝顔の白い花がぱっと咲いた……結綿を重そうに、娘も膝に袂を折って、その上へ
一顆のせました。いきなり歯を当てると、むし歯になると不可いと、私のために簪の柄を....