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万感
「万感〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
万感の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「義血侠血」より 著者:泉鏡花
に還《かえ》らざるものとなりぬ。白糸の胸中は沸くがごとく、焚《も》ゆるがごとく、
万感の心《むね》を衝《つ》くに任せて、無念|已《や》む方《かた》なき松の下蔭《し....
「幽霊塔」より 著者:黒岩涙香
とて其の甲斐はない。最早落胆せざらんと欲するも得ずだ。其のうちに愈々夜に入った、
万感|交々《こもごも》胸に迫るとは此の様な場合を云うだろうか。勿論腹は益々空く一....
「錦染滝白糸」より 著者:泉鏡花
火ぐらいおこしておきなさいなね、芝居をしていないでさ。 欣弥 (顔を上げながら、
万感胸に交々、口|吃し、もの云うあたわず。) 撫子 (慌しく立ち、一室なる火鉢を....
「踊る地平線」より 著者:谷譲次
のの漠然たる「前途を想う憂鬱」だったに相違ない。 しかしこの「去るに臨みて」の
万感こもごもは、ぼうっと黄黒い倫敦の露ぞらとともにすぐ消えて、かわりに私は、この....
「踊る地平線」より 著者:谷譲次
、それだけまた自然すぎる、漠然たる憂鬱だった。 しかし、この「去るに臨みて」の
万感こもごもは、ぼうっと赤い東京の夜ぞらとともにすぐ消えて、かわりに私は、そこに....
「風博士」より 著者:坂口安吾
の掌中に収めたのである。諸君、目前に露出する無毛赤色の怪物を認めた時に、余は実に
万感胸にせまり、溢れ出る涙を禁じ難かったのである。諸君よ、翌日の夜明けを期して、....
「金銭無情」より 著者:坂口安吾
してくれといふヒマなどは全然ない。サギだか過失だか、見当をつける余地がないから、
万感胸につまり、アレヨと見るまに取り残された自分の姿があるばかり。 「ラツワンだ....
「現代忍術伝」より 著者:坂口安吾
を起しておるな」 と、神の使いが鋭く見すくめて云った。 「ハイ」 正宗菊松は
万感胸元につまって、たゞ、たゞ、平伏するのみ。 「実はです。お父さん、非常に感動....
「街はふるさと」より 著者:坂口安吾
に御帰館なきことを知らざるを得なかったぼくの胸中というものは、甚だ俗ではあるが、
万感コモゴモでしたよ」 それを言ってしまうと、青木はかえって晴れ晴れしたようで....
「光は影を」より 著者:岸田国士
ゆるしたといえる通称「バイロン」の名を、いつまた呼ぶことができるか、京野等志は、
万感|交々いたるという面もちで、もういくらか白んで来た星空を仰いだ。 彼は、い....
「フランケンシュタイン」より 著者:シェリーメアリー・ウォルストンクラフト
、最初のうちは急いで行きたかったが、ふるさとの町に近づくと、馬の歩みをゆるめた。
万感の胸に迫るのを抑えかねたのだ。年少のころ親しんだ場面を通り過ぎていったが、そ....
「地上」より 著者:島田清次郎
くように近寄って立つ和歌子を黙って見た。長い間、二人は瞳を合わして放さなかった。
万感が二人の胸に交流した。もう一切が二人には分った。薄暗い夕闇に白く浮かんだ和歌....
「美の日本的源泉」より 著者:高村光太郎
殊に夢殿の秘仏救世観世音像に至っては、限りなき太子讃仰の念と、太子|薨去に対する
万感をこめての痛惜やる方ない悲憤の余り、造顕せられた御像と拝察せられ、他の諸仏像....
「墓が呼んでいる」より 著者:橘外男
、ただ不思議な縁で、何のゆかりもない私が今、その墓|詣りに来ているのかと思うと、
万感こもごもわき起ってくる。 「あ、旦那様、足許がお危のうごぜえます……」 「貴....
「世間師」より 著者:小栗風葉
通らぬ。ただ海の鳴る音が宵に聞いたよりももの凄く聞える。私は体の休まるとともに、
万感胸に迫って、涙は意気地なく頬を湿らした。そういう中にも、私の胸を突いたのは今....