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「上弦〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

上弦の前後の文節・文章を表示しています。該当する11件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
星座」より 著者:有島武郎
月夜だった。夜になると曇るので気づかずにいたが、もう九日ぐらいだろうかと思われる上弦というより左弦ともいうべきかなり肥った櫛形《くしがた》の月が、川向うの密生し....
自叙伝」より 著者:大杉栄
服まで着換えているのを外出止めにした。 ある日大尉は、夕飯の時に、きょうの月は上弦か下弦かという質問を出した。 「大杉!」 僕は自分の名を呼ばれて立った。そ....
雛妓」より 著者:岡本かの子
いる。澄していても何となく微笑の俤があるのは、豊かだがういういしい朱の唇が、やや上弦の月に傾いているせいでもあろうか。それは微笑であるが、しかし、微笑以前の微笑....
旅日記から」より 著者:寺田寅彦
ないために土饅頭になっているのもあった。 夜ひとりボートデッキへ上がって見たら上弦の月が赤く天心にかかって砂漠のながめは夢のようであった。船橋の探照燈は希薄な....
光と風と夢」より 著者:中島敦
る・其の清浄|無垢《むく》の華やかな荘厳さは、驚異以上である。 雲に近く、細い上弦の月が上っている。月の西の尖《とが》りの直ぐ上に、月と殆ど同じ明るさに光る星....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
がんりきの百は神尾の屋敷を出た時に、青地錦の袋に入れた刀を背負っていました。上弦の月が中空にかかっているのを後ろにして、スタスタと歩き出すと、 「もし百さん....
狸石」より 著者:豊島与志雄
ョークでいたずら書きをするだけで、ただ放置されていた。 ところが、或る夜、淡い上弦の月が西空に傾いてる頃、その焼跡に、青白い火がどろどろと燃えて、狸石のほとり....
朝やけ」より 著者:豊島与志雄
をぶらつくことも、しばしばあった。――先日もそうだった。冷かな夜風がそよ吹いて、上弦の月が西空にかかっていた。その淡い月光は、高いビルの屋上では、地上よりも身に....
紅白縮緬組」より 著者:国枝史郎
くばかりの大男でニョッキリ脛を剥き出しているのもそれらしくて勇ましい。 空には上弦の初夏の月が、朧ろに霞んだ光を零し、川面を渡る深夜の風は並木の桜の若葉に戦い....
一人舞台」より 著者:ストリンドベリアウグスト
そうしてじいっとして坐っていて落ち着き払って、黙っているのが癪に障るわ。今の月が上弦だろうが下弦だろうが、今夜がクリスマスだろうが、新年だろうが、外の人間が為合....
年中行事覚書」より 著者:柳田国男
が最も多かったが、他の月も満月の宵は価値を認められ、これに次いで重んぜられたのは上弦と下弦、すなわちこれを前後に距たること十七日の日が重要な期日と考えられていた....