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下向
「下向〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
下向の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「星座」より 著者:有島武郎
瀬はそう無遠慮に出かけてみた。
「私、飲めないもの」
酌をしながら、美しい眼が
下向きに、滴り落ちる酒にそそがれて、上瞼の長い睫毛《まつげ》のやや上反りになった....
「鳥辺山心中」より 著者:岡本綺堂
物の哀れを誘い出された。彼はある夜しみじみとお染に話した。 「将軍家が江戸表へ御
下向《ごげこう》のことは、今朝《こんちょう》支配|頭《がしら》から改めて触れ渡さ....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
帆を上げ下げする様子もない。いつまでも目の前に見えながら、四十五度くらいに船首を
下向きにしたまま、矢よりも早く走って行く。 ぎょっとしてすくみ上がってしまった....
「修禅寺物語」より 著者:岡本綺堂
お使いなされまいに、御果報|拙いがわたくしの果報よ。忘れもせぬこの三月、窟詣での
下向路、桂谷の川上で、はじめて御目見得をいたしました。 頼家 おお、その時そちの....
「少年探偵長」より 著者:海野十三
して膝をついて老人の身体をしらべだした。彼のために、老人は二三度身体を上向きに又
下向きにひっくりかえされた。 しばらくすると、作業衣の男は立上って、手をふって....
「霊魂第十号の秘密」より 著者:海野十三
管のヒラメントがうす赤く光りだした。 そこで五つの目盛盤をあやつると、天井から
下向きにとりつけてある高声器から、がらがらッと雑音《ざつおん》が出て来た。 「お....
「宇宙戦隊」より 著者:海野十三
むく。 「へんだなあ。まるで飛行機で急上昇飛行を始めると、G(万有引力のこと)が
下向きにかかるが、あれと同じようだな」 「そうですなあ。あれとよく似ていますねえ....
「怪塔王」より 著者:海野十三
でだんだん上昇速力がおちてきたのです。おそらくロケットは、やがてくるりと一転して
下向きになるとともに、さっと水平に走りだすことでしょう。まるでインメルマン逆旋回....
「七宝の柱」より 著者:泉鏡花
たりを御散歩。 まったく、一山の仏たち、大な石地蔵も凄いように活きていらるる。
下向の時、あらためて、見霽の四阿に立った。 伊勢、亀井、片岡、鷲尾、四天王の松....
「わがまま」より 著者:伊藤野枝
な苦しい笑を報いながら、 「ええありがとうやっとどうにか――」と小さな声でいって
下向いた。 「どうかしたの、真青な顔だ、気分でも悪い?」 「え、少し疲れたからで....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
の手を出すほどの心になると、橋むこうの、屋根を、ひょいひょいと手踊り雀、電信柱に
下向きの傾り燕、一羽気まぐれに浮いた鴎が、どこかの手飼いの鶯交りに、音を捕うる人....
「茸の舞姫」より 著者:泉鏡花
子は、大宮人の風情がある。 「火を、ようしめせよ、燠が散るぞよ。」 と烏帽子を
下向けに、その住居へ声を懸けて、樹の下を出しなの時、 「雨はどうじゃ……ちと曇っ....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
あった。雪の朝の不忍の天女|詣は、可憐く、可愛い。 十七 お京は
下向の、碧玳瑁、紅珊瑚、粧門の下で、ものを期したるごとくしばらく人待顔に彳んだの....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
赫として、初手のは分らなかった。瞳を凝らして、そのすっと通った鼻筋と、睫毛が黒く
下向にそこに彳んだのを見出した時、 「立二さん。」 と胸を抱いた手が白く、よく....
「燕と王子」より 著者:有島武郎
ばかりは晴れ晴れとなって子どものようになりますので、かしげがちの首もまっすぐに、
下向きがちの顔も空を見るようになるのがこのごろです。で、往来の人は長々見わすれて....