下闇[語句情報] » 下闇

「下闇〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

下闇の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
邪宗門」より 著者:芥川竜之介
りは、ちと場所がようなかったぞ。ならば糺《ただす》の森あたりの、老木《おいき》の下闇に致したかった。あすこは夏の月夜には、せせらぎの音が間近く聞えて、卯《う》の....
白蟻」より 著者:小栗虫太郎
ン舵機のように廻しながら、おりおり滝人のほうを眺め、ほとんど無我夢中に、前方の樹下闇《このしたやみ》の中に這い込もうとしている。だが、彼を追うているのは、ただ一....
二、三羽――十二、三羽」より 著者:泉鏡花
ん。御閑静で実に結構です。霧が湧いたように見えますのは。」 「烏瓜でございます。下闇で暗がりでありますから、日中から、一杯咲きます。――あすこは、いくらでも、ご....
朱日記」より 著者:泉鏡花
どではないが、まざまざと足が並んで、はっと不意に、こっちが立停まる処を、抜けた。下闇ながら――こっちももう、僅かの処だけれど、赤い猿が夥しいので、人恋しい。 ....
吉原新話」より 著者:泉鏡花
ね、考えて見ると、面白くも何とも無いのさ。 足許だけぼんやり見える、黄昏の木の下闇を下り懸けた、暗さは暗いが、気は晴々する。 以前と違って、それから行く、…....
神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
て桜が散り山吹が散った。芒の芽が延びて来た。春が※忽と逝ったのである。五月雨、木下闇、蚊の呻り、こうして夏が来たのである。 甲斐の盆地の夏景色は、何んともいえ....
伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
の葉、この炎天の下蔭は、あたかも稲妻に籠る穴に似て、もの凄いまで寂寞した。 木下闇、その横径の中途に、空屋かと思う、廂の朽ちた、誰も居ない店がある…… ....
草迷宮」より 著者:泉鏡花
う、嘉吉が気が違いました一件の時から、いい年をしたものまで、黒門を向うの奥へ、木下闇を覗きますと、足が縮んで、一寸も前へ出はいたしませぬ。 簪の蒼い光った珠も....
沼夫人」より 著者:泉鏡花
中に出つ入りつ、糸を引いて枝折にした形に入る……赤土の隙間なく、凹に蔭ある、樹の下闇の鰭爪の跡、馬は節々通うらしいが、処がら、竜の鱗を踏むと思えば、鼈の足痕を辿....
置土産」より 著者:国木田独歩
老松樹ちこめて神々しき社なれば月影のもるるは拝殿|階段の辺りのみ、物すごき木の下闇を潜りて吉次は階段の下に進み、うやうやしく額づきて祈る意に誠をこめ、まず今日....
郊外」より 著者:国木田独歩
うわさをしようがお前さんの関った事ジャアないよ、ねエ先生!』 時田は驚いて木の下闇を見ると、一人の男が立っていたが、ツイと長屋の裏の方へ消えてしまった。 『だ....
稚子法師」より 著者:国枝史郎
分でも固くそう信じて真田屋敷へは住んだのであった。 それは石楠花の桃色の花が木下闇に仄々と浮び、梅の実が枝に熟するという五月雨時のことであったが、或夜何気なく....
沙漠の古都」より 著者:国枝史郎
も云わなかった。それが一層レザールには物凄いことに思われた。 二人はなるたけ木下闇の人目にたたない闇の場所を、選りに選って歩いて行く。 「止まって」 と突然....
歌麿懺悔」より 著者:邦枝完二
の間にやら消え失せてしまうと、あれほど人の行き来に賑わってた浅草も、たちまち木の下闇の底気味悪いばかりに陰を濃くして、襟を吹く秋風のみが、いたずらに冷々と肌を撫....
春泥」より 著者:久保田万太郎
片でもいゝみつけたい、さすがに三浦もそうした寂しいとりなしをみせた。――夏なら木下闇の、枯れ枝ながら鬱陶しくさし交した下は、溜った落葉の、土の匂も湿けて暗かった....