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両袖
「両袖〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
両袖の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
の》を抱《だ》き上げている所だった。
「猫かい?」
「いえ、犬でございますよ。」
両袖を胸に合せたお蓮は、じっとその犬を覗きこんだ。犬は婆さんに抱かれたまま、水々....
「お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
彼が茶の間から出て行くと、米噛《こめか》みに即効紙《そっこうし》を貼ったお絹は、
両袖に胸を抱《だ》いたまま、忍び足にこちらへはいって来た。そうして洋一の立った跡....
「蜃気楼」より 著者:芥川竜之介
言わないうちに僕の疑問に返事をした。
「砂のせいですね。そうでしょう?」
妻は
両袖《りょうそで》を合せるようにし、広い砂浜をふり返っていた。
「そうらしいね。....
「或る女」より 著者:有島武郎
なって上を下へと飛びはねるので、葉子は思わずデッキのパンネルに身を退《ひ》いて、
両袖《りょうそで》で顔を抑《おさ》えて物を念じるようにした。
そうやって気を静....
「星座」より 著者:有島武郎
その瞬間におせいはどっと悲しくなった。そしてそこに体を倚《よ》せかけたまま、
両袖を顔にあてて声をひそめながら泣きはじめた。
* * *....
「天守物語」より 著者:泉鏡花
よう、舌長姥、取次がっせえ。 階子の上より、真先に、切禿の女童、うつくしき手鞠を
両袖に捧げて出づ。 亀姫、振袖、裲襠、文金の高髷、扇子を手にす。また女童、うしろ....
「海神別荘」より 著者:泉鏡花
。美女。毛巻島田に結う。白の振袖、綾の帯、紅の長襦袢、胸に水晶の数珠をかけ、襟に
両袖を占めて、波の上に、雪のごとき竜馬に乗せらる。およそ手綱の丈を隔てて、一人|....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
ない、その塗ったのが、いきなり、欄干を跨いで出る奴さ。」 十四 「
両袖で口を塞いで、風の中を俯向いて行く。……その女の案内で、つい向う路地を入ると....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
七 「ずっと前へお出なさい、と云って勧めても、隅の口に遠慮して、膝に
両袖を重ねて、溢れる八ツ口の、綺麗な友染を、袂へ、手と一所に推込んで、肩を落して....
「縁結び」より 著者:泉鏡花
かけていなすった。ト私が覗いた時、くるりと向うむきになって、格子戸へ顔をつけて、
両袖でその白い顔を包んで、消えそうな後姿で、ふるえながら泣きなすったっけ。 桑....
「照葉狂言」より 著者:泉鏡花
両面着けて、黒き天鵞絨の縁取りたる綿厚き座蒲団の、胸に当てて膝を蔽うまでなるを、
両袖に抱えて来つ。 見返る女に顔を見合せて、 「あのね、姉さんが。」と小声に含....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
て安からぬ状に附添った、廉平の足許に、見得もなく腰を落し、裳を投げて崩折れつつ、
両袖に面を蔽うて、ひたと打泣くのは夫人であった。 「ほんとうに夫人、気を落着けて....
「露肆」より 著者:泉鏡花
、母衣を懸けたのが当の夜の縁女であろう。 黒小袖の肩を円く、但し引緊めるばかり
両袖で胸を抱いた、真白な襟を長く、のめるように俯向いて、今時は珍らしい、朱鷺色の....
「怨霊借用」より 著者:泉鏡花
まま手を掛けて、お開けなさると、するりと向うへ、お桂様は庭の池の橋がかりの上を、
両袖を合せて、小刻みにおいでなさる。蝙蝠だか、蜘蛛だか、奴は、それなり、その角の....
「白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
ないのが、むぞうさな束髪で、襟脚がくっきり白い。大島絣に縞縮緬の羽織を着たのが、
両袖を胸に合せ、橋際の柱に凭れて、後姿で寂しそうに立っている。横顔をちらりと視て....