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中空
「中空〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
中空の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
いる。東山の上が、うす明るく青んだ中に、ひでりにやせた月は、おもむろにさみしく、
中空《なかぞら》に上ってゆく。それにつれて、加茂川にかかっている橋が、その白々《....
「邪宗門」より 著者:芥川竜之介
ち》から、俄《にわか》に一道の白気《はっき》が立上《たちのぼ》って、それが隠々と
中空《なかぞら》へたなびいたと思いますと、丁度|僧都《そうず》の頭《かしら》の真....
「神神の微笑」より 著者:芥川竜之介
聳えていた。ただその沈黙が擾《みだ》されるのは、寺の鳩《はと》が軒へ帰るらしい、
中空《なかぞら》の羽音《はおと》よりほかはなかった。薔薇の匂《におい》、砂の湿り....
「竜」より 著者:芥川竜之介
ん》がそこへ来てから、やがて半日もすぎた時分、まるで線香の煙のような一すじの雲が
中空《なかぞら》にたなびいたと思いますと、見る間にそれが大きくなって、今までのど....
「仙人」より 著者:芥川竜之介
松の梢《こずえ》から離れました。が、離れたと思うと落ちもせずに、不思議にも昼間の
中空《なかぞら》へ、まるで操《あやつ》り人形のように、ちゃんと立止ったではありま....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
。
が、その内に眼の下の部落からは、思いもよらない火事の煙が、風の断《た》えた
中空《なかぞら》へ一すじまっ直《すぐ》に上り始めた。老人はその煙の中に立ち昇る火....
「少年」より 著者:芥川竜之介
その晩父と一しょに蝋《ろう》を引いた布の上へ、もう一度ヴェネチアの風景を映した。
中空《ちゅうくう》の三日月、両側の家々、家々の窓の薔薇《ばら》の花を映した一すじ....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
えた者がある。 向うの真砂町の原は、真中あたり、火定の済んだ跡のように、寂しく
中空へ立つ火気を包んで、黒く輪になって人集り。寂寞したその原のへりを、この時通り....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
概念が得られたに相違ない。恒星をちりばめた天球はどうかというと、これもまた巨大な
中空の球であって同じ中心火のまわりを回っているものと考えられた。その上にまた地球....
「海神別荘」より 著者:泉鏡花
白く葉の青き蓮華燈籠、漂々として波に漾えるがごとく顕る。続いて花の赤き同じ燈籠、
中空のごとき高処に出づ。また出づ、やや低し。なお見ゆ、少しく高し。その数|五個に....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
まり…… と口誦むように独言の、膝栗毛五編の上の読初め、霜月十日あまりの初夜。
中空は冴切って、星が水垢離取りそうな月明に、踏切の桟橋を渡る影高く、灯ちらちらと....
「海の使者」より 著者:泉鏡花
に、薄黒い雲は流れたが、玄武寺の峰は浅葱色に晴れ渡って、石を伐り出した岩の膚が、
中空に蒼白く、底に光を帯びて、月を宿していそうに見えた。 その麓まで見通しの、....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
池なる天女の楼台は、絳碧の幻を、梁の虹に鏤め、桜柳の面影は、靉靆たる瓔珞を白妙の
中空に吹靡く。 厳しき門の礎は、霊ある大魚の、左右に浪を立てて白く、御堂を護る....
「人魚のひいさま」より 著者:アンデルセンハンス・クリスチャン
くつもいくつも、しゅうしゅういいながらまわりました。すばらしくきれいな火魚が青い
中空にはね上がりました。そうして、それがみんな鏡のようにたいらな海の上にうつりま....
「杜子春」より 著者:芥川竜之介
そこは深い谷に臨んだ、幅の広い一枚岩の上でしたが、よくよく高い所だと見えて、
中空に垂れた北斗の星が、茶碗程の大きさに光っていました。元より人跡の絶えた山です....