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丹前
「丹前〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
丹前の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「母」より 著者:芥川竜之介
つか》なさそうに、こう誰かへ声をかけた。
誰か、――部屋の中には女のほかにも、
丹前《たんぜん》を羽織《はお》った男が一人、ずっと離れた畳の上に、英字新聞をひろ....
「冬」より 著者:芥川竜之介
えていた。が、大勢《おおぜい》の面会人は誰も存外《ぞんがい》平気らしかった。殊に
丹前《たんぜん》を二枚重ねた、博奕《ばくち》打ちらしい男などは新聞一つ読もうとも....
「火事とポチ」より 著者:有島武郎
たぼくにはたいへんうれしかった。寒いだろうといった。葛湯《くずゆ》をつくったり、
丹前《たんぜん》を着せたりしてくれた。そうしたらぼくはなんだか急に悲しくなった。....
「星座」より 著者:有島武郎
のを払いのけて、原稿用紙に向った。純次はそのすぐそばで前後も知らず寝入っていた。
丹前を着て、その上に毛布を被ってもなお滲み透ってくるような寒さを冒して、清逸は「....
「蠅男」より 著者:海野十三
つもりなのかしら」 彼は寝不足の充血した目をこすりながら、起きあがった。そして
丹前を羽織ると、縁側に出て、雨戸をガラガラと開いた。とたんに彼は、狆のように顔を....
「岡本一平論」より 著者:岡本かの子
す。暴食の癖なども殆ど失せたせいか、健康もずっと増し、二十|貫目近い体に米琉の昼
丹前を無造作に着て、日向の椽などに小さい眼をおとなしくしばたたいて居る所などの氏....
「落ちてゆく世界」より 著者:久坂葉子
いるらしく、時折苦しそうなその父の声と、母のものうさそうな声にまじって、つむぎの
丹前のすれあう音がします。私には両親の語る言葉が、自分のことだとさえ感じられない....
「怪しの者」より 著者:国枝史郎
ざいました。そうしてそのお柳は少したったのちには、この家の奥の茶の間にすわって、
丹前を着た三十五、六の、眼の鋭い、口元の締まった武士と、砕けた様子で話していまし....
「大捕物仙人壺」より 著者:国枝史郎
相の持主であった。下っ引の手合も今日はいず、一人いい気持に酔っていた。 朝風呂
丹前長火鉢、これがこの手合の理想である。しかし岡っ引の手あて、賄賂を取らなければ....
「名人地獄」より 著者:国枝史郎
たよ」 燃え立つばかりの緋縮緬、その長襦袢をダラリと引っかけ、その上へ部屋着の
丹前を重ね、鏡台の前へだらしなく坐り、胸を開けて乳房を見せ、そこへ大きな牡丹刷毛....
「番町皿屋敷」より 著者:岡本綺堂
。唯一筋に思いつめたが最後白柄組の付合にも吉原へは一度も足踏みをしたことがない。
丹前風呂でも女の杯は手にとったことがない。それほどに堅い義理を守っているのが、嘘....
「雪の夜」より 著者:織田作之助
からの遠出で、客が連れて来たのであろう。客は河豚で温まり、てかてかした頬をして、
丹前の上になにも羽織っていなかった。鼻が大きい。 その顔を見るなり、易者はあく....
「秋深き」より 著者:織田作之助
」を想い出した。それより若くは見えなかった。 女はどうぞとこちらを向いて、宿の
丹前の膝をかき合わせた。乾燥した窮屈な姿勢だった。座っていても、いやになるほど大....
「明治時代の湯屋」より 著者:岡本綺堂
んだんに殖えて来たのを見ても、東京の湯屋の変遷が窺い知られる。もちろん遠い昔には
丹前風呂などの名があって、江戸でも風呂屋と呼んでいたらしいが、風呂屋の名はいつか....
「扉の彼方へ」より 著者:岡本かの子
した。 「どうだね、ここは」 良人は浴室で一風呂浴びて来た血色のいい肌へ浴衣に
丹前を重ねたものを不器用に着て縁に立ちました。硝子戸越の早春の朝の陽差しを眩しい....