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丹塗
「丹塗〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
丹塗の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
全く忘れている。なんでも幼い時に一度、この羅生門《らしょうもん》のような、大きな
丹塗《にぬ》りの門の下を、たれかに抱くか、負われかして、通ったという記憶がある。....
「羅生門」より 著者:芥川竜之介
で雨やみを待っていた。
広い門の下には、この男のほかに誰もいない。ただ、所々|
丹塗《にぬり》の剥《は》げた、大きな円柱《まるばしら》に、蟋蟀《きりぎりす》が一....
「少年」より 著者:芥川竜之介
吉はこの家々だの水路だのにただたよりのない寂しさを感じた。彼の愛する風景は大きい
丹塗《にぬ》りの観音堂《かんのんどう》の前に無数の鳩《はと》の飛ぶ浅草《あさくさ....
「神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
冠った満月が。微風、水鳥、花咲いた水藻、湖水は平かでございました。烏帽子、水干、
丹塗りの扇、可哀そうな失恋した白拍子は、揺られ揺られて行きました。風よ吹けよ、浪....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
らく車を下りる。株立ちの矮い桜は落葉し尽して、からんとした中に、山門の黄が勝った
丹塗と、八分の紅を染めた楓とが、何とも云えぬ趣をなして居る。余は御室が大好きであ....
「新版 放浪記」より 著者:林芙美子
がいっぱいだった。穴倉のように暗い三等船室に帰って、自分の毛布の上に坐っていると
丹塗《にぬ》りのはげた膳の上にはヒジキの煮たのや味噌汁があじきなく並んでいた。薄....
「春昼」より 著者:泉鏡花
下を、馬が駈け抜けそうに高いけれども、欄干は影も留めない。昔はさこそと思われた。
丹塗の柱、花狭間、梁の波の紺青も、金色の竜も色さみしく、昼の月、茅を漏りて、唐戸....
「写生紀行」より 著者:寺田寅彦
えの紅や黄を帯びた色彩がなんとも言われなく美しい。木の影には他の工場の倉庫らしい
丹塗りの単純な建物が半面を日に照らされて輝いている。その前には廃工場のみぎわに茂....
「茸の舞姫」より 著者:泉鏡花
潜って来たのは、三人|斉しく山伏なり。白衣に白布の顱巻したが、面こそは異形なれ。
丹塗の天狗に、緑青色の般若と、面白く鼻の黄なる狐である。魔とも、妖怪変化とも、も....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
護るのを、詣るものの、浮足に行潜ると、玉敷く床の奥深く、千条の雪の簾のあなたに、
丹塗の唐戸は、諸扉両方に細めに展け、錦の帳、翠藍の裡に、銀の皿の燈明は、天地の一....
「死者の書」より 著者:折口信夫
れてはじめて、「朝目よく」と謂った語を、内容深く感じたのである。目の前に赤々と、
丹塗りに照り輝いて、朝日を反射して居るのは、寺の大門ではないか。そうして、門から....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
に私の眼を惹いたものは、向って右手の山の中腹に、青葉がくれにちらちら見える一つの
丹塗のお宮でございました。それはホンの三|尺四|方位の小さい社なのですが、見渡す....
「地上」より 著者:島田清次郎
うか。 この二人の少女に隣合って一つの寝床が空のままであった。汚れた敷布の上に
丹塗の枕が二つ並んだままにある。それは仲のよい菊龍と富江の「共同の」床であった。....
「加波山」より 著者:服部之総
みるみる品物と人々の位置が定まると、手ぶらと思った先頭の老人はいつのまにか二個の
丹塗《にぬり》の大椀を手にしており、一つを膝そばに置き一つを捧げて私に差す。この....
「雷門以北」より 著者:久保田万太郎
観念を与える言葉である。第一に浅草といいさえすれば僕の目の前に現われるのは大きな
丹塗の伽藍である。或はあの伽藍を中心にした五重塔や仁王門である。これは今度の震災....