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九死
「九死〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
九死の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「疑惑」より 著者:芥川竜之介
さないで置いたなら今の備後屋《びんごや》の女房の話のように、私の妻もどんな機会で
九死《きゅうし》に一生《いっしょう》を得たかも知れない。それを私は情無《なさけな....
「真景累ヶ淵」より 著者:三遊亭円朝
ら母も心配致しまする。と江戸から早飛脚《はやびきゃく》で、下谷大門町の伯父勘藏が
九死一生で是非新吉に逢いたいと云うのでございますが、只今の郵便の様には早く参りま....
「両国の秋」より 著者:岡本綺堂
帰るときに豊吉が格子の外まで送って出た。 「旦那、ようござんすかえ。姐さんは
九死一生という場合なんですぜ。お屋敷の御用は仕方がありませんが、ほかの何事をおい....
「地中魔」より 著者:海野十三
で岸壁のように揺らぎもしなかった鉄扉が、すこしずつ手前の方へ開いてくるのだった。
九死に一生! 扉は重いと見えて、ほんの少しずつ拡がっていった。 「お、親分?」....
「青蛙堂鬼談」より 著者:岡本綺堂
う、その理屈は今までにも大抵判っていたが、今度のことは何とも判断が付かなかった。
九死一生の場になって、彼がなにかの呪文を唱えながら自分の股引を二つに引裂くと、蛇....
「旗本退屈男」より 著者:佐々木味津三
です。 「予ガ子々孫々誓ッテ守ルベシ、大和田八郎次、病気平癒ノ祈願致セシトコロ、
九死ニ一生ヲ得テ幸イニ病魔ノ退散ヲ見タルハ、コレ単ニ当豊明権現ノ御加護ニ依ルトコ....
「流行暗殺節」より 著者:佐々木味津三
死にかけているというのか」 「急所ははずれたが、思いのほかに傷が深いから、十中八
九死ぬだろうというんです。うれしいじゃごわせんか」 「ふん……」 「ふんはないで....
「白峰山脈縦断記」より 著者:小島烏水
を占領した。 鼠色の凶兆はあった、それから間もなく、疾風豪雨になって、一行は、
九死一生の惨めな目に遇わされた。 石・苔・偃松(白河内岳に登る記) 野....
「宝島」より 著者:佐々木直次郎
「お前は工合がよくなっているよ、なあ、おい。」と彼は頭に繃帯をした男に言った。「
九死に一生を得た人間というのがいるなら、それはお前のことだ。お前の頭は鉄のように....
「後の業平文治」より 著者:三遊亭円朝
籠に乗せて本材木町の番屋を指して出て往きました。お話別れて、此方は文治の宅、母は
九死一生で、家内の心配|一方ならず、折から訪れ来る者があります。 「えゝ頼む」....
「雪霊記事」より 著者:泉鏡花
しかもその雪なす指は、摩耶夫人が召す白い細い花の手袋のように、正に五弁で、それが
九死一生だった私の額に密と乗り、軽く胸に掛ったのを、運命の星を算えるごとく熟と視....
「良夜」より 著者:饗庭篁村
三間町の深沢某なり。この人元よりの東京人にてある年越後へ稼ぎに来りしが病に罹りて
九死一生となり、路用も遣い果して難渋窮まりしを伯父が救いて全快させしうえ路用を与....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
ったね。」 「貰いましたともさ、貰ったどころじゃない、お嬢さんだって、私だって、
九死一生な処を助けて下すった方ですもの、」 「
九死一生、」 お嬢さんと聞いたば....
「西航日録」より 著者:井上円了
たるは、奇縁といわざるべからず。氏もまた哲学館出身にして、さきに千辛万苦をなめ、
九死に一生を賭して、ヒマラヤ山中、無人の絶境に入り、ついに入蔵の目的を達するを得....
「雨」より 著者:織田作之助
々ぎこちなく真赧になってしまうのだった。沈黙の十五秒が恐ろしく永い時間に思われ、
九死に一生、三十六計とばかり、別に用事はなかったんです。唯それだけです、と全くた....