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九輪
「九輪〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
九輪の前後の文節・文章を表示しています。該当する14件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
られて、今では、越《こし》の国の人が見るという蜃気楼《かいやぐら》のように、塔の
九輪や伽藍《がらん》の屋根を、おぼつかなく光らせながら、ほのかな明るみと影との中....
「鼻」より 著者:芥川竜之介
を敷いたように明るい。塔の屋根には霜が下りているせいであろう。まだうすい朝日に、
九輪《くりん》がまばゆく光っている。禅智内供は、蔀《しとみ》を上げた縁に立って、....
「文放古」より 著者:芥川竜之介
《あが》ると、最勝寺《さいしょうじ》の塔が見えるんでしょう。そのまた塔の霞の中に
九輪《くりん》だけ光らせているところは与謝野晶子《よさのあきこ》でも歌いそうなの....
「渋江抽斎」より 著者:森鴎外
戸の全市に家屋土蔵の無瑕なものは少かった。上野の大仏は首が砕け、谷中天王寺の塔は
九輪が落ち、浅草寺の塔は
九輪が傾いた。数十カ所から起った火は、三日の朝辰の刻に至....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
いわねばなりません。 清澄の茂太郎は、その時分、寺の東南、宮の台なる三重の塔の
九輪《くりん》の上に遊んでおりました。 「弁信さあーん」 塔の上から三度、弁信....
「日本天変地異記」より 著者:田中貢太郎
記録があるが、そのうちで大きかったのは、五年五月の京都の地震で、祇園神社の石塔の
九輪が墜ちて砕けた。十六年六月には山城をはじめ、摂津、大和、紀伊、阿波の諸国に大....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
一 清澄の茂太郎は、ハイランドの月見寺の三重の塔の
九輪《くりん》の上で、しきりに大空をながめているのは、この子は、月の出づるに先立....
「大和路・信濃路」より 著者:堀辰雄
にはいって、おやと思って、そこに足を止めた。それが浄瑠璃寺の塔の錆《さび》ついた
九輪《くりん》だったのである。 なにもかもが思いがけなかった。――さっき、坂の....
「生死卍巴」より 著者:国枝史郎
花から夏の花から、一時に咲いて妍を競っていた。木芙蓉の花が咲いているかと思うと、
九輪草の花が咲いていた。薔薇と藤とが咲いているかと思うと、水葵の花が咲いていた。....
「秋草」より 著者:島崎藤村
、垣のどこかに眸を見開かないという朝とてもなかった。今朝も、わたしの家では、十八
九輪もの眼のさめるようなやつが互の小さな生命を競い合うように咲いている。これから....
「歌麿懺悔」より 著者:邦枝完二
とばかり、洗ったような声を振り立てていた。 二 今まで五重塔の
九輪に、最後の光を残していた夕陽が、いつの間にやら消え失せてしまうと、あれほど人....
「リラの手紙」より 著者:豊田三郎
たりと入口を閉める、青江とは反対の聡明な女なのだ。そう思い出し、龍野氏と別れて、
九輪を型どった青銅の噴泉の傍に呆然としていると、三ツ木がニヤニヤしながら遣って来....
「五重塔」より 著者:幸田露伴
を熟視たまうに、初重より五重までの配合、屋根|庇廂の勾配、腰の高さ、椽木の割賦、
九輪請花露盤宝珠の体裁までどこに可厭なるところもなく、水際立ったる細工ぶり、これ....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
めに油の料にも事を欠いて天王寺は貧窮をきわめた。――のみならず師泰は、天王寺塔の
九輪の宝鈴を一つ鋳つぶして、こころみに酒の鑵子(ちろり)に造らせてみるに、玲々た....