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「乱雑〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

乱雑の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
に思いなぞした。 しかし彼の※《まぶた》の裏には、やはりさまざまな母の記憶が、乱雑に漂って来勝ちだった。その中には嬉しい記憶もあれば、むしろ忌《いま》わしい記....
槍が岳に登った記」より 著者:芥川竜之介
の方はこの大石にさえぎられて何も見えぬ。目の前にひろげられたのはただ、長いしかも乱雑な石の排列、頭の上におおいかかるような灰色の山々、そうしてこれらを強く照らす....
或る女」より 著者:有島武郎
すと、彼女は突然私生児の定子の事を思い出した。そしてその父なる木部の姿は、かかる乱雑な連想の中心となって、またまざまざと焼きつくように現われ出た。 その現われ....
星座」より 著者:有島武郎
江は已《や》むを得ず、 「それじゃ貴様頼むぞ」 と言い残して、留守番の台所口に乱雑に脱ぎ捨ててある教師たちの履物《はきもの》の中から、自分の分を真暗らな中で手....
義血侠血」より 著者:泉鏡花
翼緊《はがいじ》めに遭《あ》えり。たちまち暴《あら》くれたる四隻《よつ》の手は、乱雑に渠の帯の間と内懐とを撈《かきさが》せり。 「あれえ!」と叫びて援《すく》い....
婦系図」より 著者:泉鏡花
十六 さて湯へ入る時、はじめて理学士の書斎を通った。が、机の上は乱雑で、そこに据えた座蒲団も無かった、早瀬に敷かせているのがそれらしい。 机に....
生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
その晩になって一封の手紙が君から届いて来た。やはり厚い画学紙にすり切れた筆で乱雑にこう走り書きがしてあった。 「北海道ハ秋モ晩クナリマシタ。野原ハ、毎日ノヨ....
惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
ならぬ。私を最もよく知るものは私自身であるとは思うけれども、私の知りかたは余りに乱雑で不秩序だ。そして私は言葉の正当な使い道すらも十分には心得ていない。その言葉....
紅黄録」より 著者:伊藤左千夫
暗い蚕棚の側で、なつかしい人なだけあわれはわけても深い。表半分雨戸をしめ家の中は乱雑、座を占める席もないほどである。 「秋蚕ですか、たくさん飼ったんですか」 「....
柿色の紙風船」より 著者:海野十三
いぞ」 「え?」 「ナニ、いいよいいよ」と私は云いながら、隅ッこに駄目な花びらが乱雑にまるめてあるところへ寄った。そして中から、一枚の柿色の花びらを取った。「こ....
崩れる鬼影」より 著者:海野十三
は泪さえ浮べて云いました。 「おや、あれはどうしたのです」 兄は内扉の向うが、乱雑にとりちらかされてあるのを見て、老婦人に尋ねました。 「あれは衣服室なのです....
政談十二社」より 著者:泉鏡花
罐から湯気を立たせたのを前に置き、煤けた棚の上に古ぼけた麦酒の瓶、心太の皿などを乱雑に並べたのを背後に背負い、柱に安煙草のびらを張り、天井に捨団扇をさして、ここ....
不周山」より 著者:井上紅梅
て、山を近くに引寄せてよく見ると、それらのものの周りの地上には、金色の玉の粉末が乱雑に散らばっており、また、かみ砕いた松柏の葉や魚の肉が雑っている、それらが続い....
良夜」より 著者:饗庭篁村
がらに地獄の如く、各種商店の飾りあだかも極楽の荘厳の如く恍然として東西を弁ぜず、乱雑して人語を明らめがたし。我自ら我身を顧りみれば孑然として小虫の如く、車夫に罵....
春昼後刻」より 著者:泉鏡花
うであったが、鉛筆で描いたのは…… 一目見て散策子は蒼くなった。 大小|濃薄乱雑に、半ばかきさしたのもあり、歪んだのもあり、震えたのもあり、やめたのもあるが....