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争えない
「争えない〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
争えないの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「苦力頭の表情」より 著者:里村欣三
十六で五つも年上の娘と恋に落ちた。そして村一統の指弾の的標になった。 ――血は
争えないものだ。お前のおふくろもお前と同じに肩あげのとれない内から不義に落ちて、....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
後の門人と一口には言っても、この先輩に水戸風な学者の影響の多分に残っていることは
争えないとも考えさせられた。 「だれか君を呼ぶ声がする。」 正香は戸に近づく人....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
たころから見ると、父も次第に健康を回復したが、しかしめっきり老い衰えて来たことは
争えない。父ももはやそんなに長くこの世に生きている人ではなかろう。手から伝わって....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
アメリカの立場を明らかにした。 ファルケンボルグの出した布告は、だれも正面から
争えないほど厳正なものであった。彼は日本の御門と大君との間に戦争の起こったことを....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
蔵にしてからが、そうだ。ただ馬籠駅長として実際その道に当たって見た経験から、彼の
争えないと想っていることは、一つある。交通の持ち来たす変革は水のように、あらゆる....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
、筋ばった白い首のあたりは、皺がまざまざ目立って、肩から背へかけての後ろ姿にも、
争えない寂しさがあった。庸三は大阪で初めて見た花々しい彼の三十代以来の舞台姿を、....
「文化祭」より 著者:坂口安吾
うか。オイ。これだぜ。これを政治的フクミと云うんだ。今の言葉でな。そうか。血筋は
争えないもんだなア。さすがに名門の子孫だよ。おそるべき政治的手腕だぜ。バカどころ....
「安吾巷談」より 著者:坂口安吾
、デリケートなものよりも無神経の方へ生活形態の方向を推し進めようとしていることは
争えない。 それは軍部が言論同様、芸術にも統制を加えて、彼らに理解しうる限度を....
「次郎物語」より 著者:下村湖人
のやりかねないことでもあったのである。その点では、お祖母さんと次郎とは、さすがに
争えない血のつながりであった。しかし、悪魔の心を最もよく見ぬく者は悪魔であり、そ....
「次郎物語」より 著者:下村湖人
七十歳をこしてしまったことだし、生命に別条がないとしても、脳味噌の硬化はさすがに
争えないものがあるのだから、めったな約束はしない方がいいだろうと思うのである。た....
「俳優倫理」より 著者:岸田国士
つけられたのです。 近代の演劇史を通じてみて、俳優の社会的地位の低かったことは
争えない事実ですが、そこから、世間の軽蔑も生れているのです。「河原者」などという....
「春宵因縁談」より 著者:佐藤垢石
示しているけれど、往年全国の読書界を風靡した時代に比べれば、いささか下り坂だけは
争えない。社の古い関係者が、この姿を見て誰か嘆かぬものがあろうか。そこへ、社の古....
「チェーホフ試論」より 著者:神西清
たる生活態度に、チェーホフが及びがたく学びがたいものを痛切に感じていたことだけは
争えない。多少ともこれに似た畏敬の念を彼に抱かせた同時代人はコロレンコだ。チェー....
「雪柳」より 著者:泉鏡花
そ、といって起った時には、すこしばかり妙な寂しい気がしたのです。 人情ですか、
争えない、それもあります。それに、自動車でなくっては運ばれない。嵩張った手土産が....
「四十年前」より 著者:内田魯庵
瘠土に注いで肥饒の美田となり、新たに植樹した文明の苗木が成長して美果を結んだのは
争えない。少くも今日の新らしい文芸美術の勃興は当時の欧化熱に負う処があった。 ....