五月闇[語句情報] » 五月闇

「五月闇〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

五月闇の前後の文節・文章を表示しています。該当する10件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
橡の花」より 著者:梶井基次郎
とどく程の距離にかなひでという木があります。朴《ほお》の一種だそうです。この花も五月闇《さつきやみ》のなかにふさわなくはないものだと思いました。然しなんと云って....
阿部一族」より 著者:森鴎外
に玄関に来て、雨具を脱いで座敷に通った。中陰の翌日からじめじめとした雨になって、五月闇《さつきやみ》の空が晴れずにいるのである。 障子はあけ放してあっても、蒸....
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
処此処に柿紅葉、白膠木紅葉、山紅葉が眼ざましく栄える。雪も好い。月も好い。真暗い五月闇に草舎の紅い火を見るも好い。雨も好い。春陰も好い。秋晴も好い。降る様な星の....
貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
して、蒼穹の奥、黒く流るる処、げに直顕せる飛行機の、一万里の荒海、八千里の曠野の五月闇を、一閃し、掠め去って、飛ぶに似て、似ぬものよ。 ひょう、ひょう。 ....
古狢」より 著者:泉鏡花
枝に引掛けて、――名古屋の客が待っていた。冥途の首途を導くようじゃありませんか、五月闇に、その白提灯を、ぼっと松林の中に、という。……成程、もの寂しさは、もの寂....
新緑」より 著者:宮本百合子
伝って落ちる点滴の音がやや憂鬱に響いて来る。夜の闇の濃さが、古歌を思い出させた。五月闇おぼつかなきに郭公 山の奥より鳴きていづなり この歌調には、何か切....
雪柳」より 著者:泉鏡花
知らぬ事、時鳥といわぬが見つけものの才子が、提灯は借らず、下駄穿きに傘を提げて、五月闇の途すがら、洋杖とは違って、雨傘は、開いて翳しても、畳んで持っても、様子に....
私本太平記」より 著者:吉川英治
藤内左衛門の一勢は、水馬隊を編成して、橋下を泳ぎわたる――となって、前夜の北岸は五月闇のうちに殺気立った。 むろん南岸の楠木勢も、これを無関心ではいまい。それ....
旗岡巡査」より 著者:吉川英治
を空にして追いついて来た。 「ありがとう。今夜は星も見えないんだね」 「そろそろ五月闇ですから」 「社家様のお宅では、以前からおまえの家でお米を取っているんです....
茶漬三略」より 著者:吉川英治
その晩のわしは、まったく捨身だった。田も畑も街道も見えなかった。ただ真っ暗な五月闇の雲の断れ目に、ぴかぴかと大きく光る星だけが、何かの凶兆のように眼に映った....