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仭
「仭〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
仭の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「富士」より 著者:岡本かの子
娘は祭の儀を説いて神の中なる神に相逢うといった。 思えば思うほどひとり壁立|万
仭《ばんじん》の高さに挺身《ていしん》して行こうとする娘の健気《けなげ》な姿が空....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
らに走らせてゆく。まばゆい、曼珠沙華のような極光の倒影。吹雪、青の光をふきだす千
仭の氷罅。――いたるところに口を開く氷の墓の遥かへと、そのエスキモーは生きながら....
「支倉事件」より 著者:甲賀三郎
う」 「その通りです」 主人の云う所は嘘とは思えぬ。石子は登りつめた絶頂から九
仭の谷へ落されたように情なくなった。 「今手紙は来ていませんか」 「一昨日でした....
「海神別荘」より 著者:泉鏡花
ました。 博士 (敬礼す。) 公子 これを御覧なさい。(姿見の面を示す。) 千
仭の崕を累ねた、漆のような波の間を、幽に蒼い灯に照らされて、白馬の背に手綱したは....
「火星兵団」より 著者:海野十三
、言いたげな顔であった。
新田先生の最後の頼みの綱も、ついに切れた。先生は、千
仭の断崖から、どんと下へ突落されたように思った。もう立っていることが出来ないほど....
「栃の実」より 著者:泉鏡花
として、白い雲は、その黒髪の肩越に、裏座敷の崖の欄干に掛って、水の落つる如く、千
仭の谷へ流れた。 その裏座敷に、二人一組、別に一人、一人は旅商人、二人は官吏ら....
「唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
げます。) と天幕に入ると、提げて出た、卓子を引抱えたようなものではない、千|
仭の重さに堪えない体に、大革鞄を持った胸が、吐呼吸を浪に吐く。 それと見ると、....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
苦しめる。突然、数丈もある氷塔が頭上に落ちてくるだろう。また、なにもない足下に千
仭の氷罅が空くだろう。なんていうのがザラだろうという訳も、すべてあの氷河の猛速の....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
少年を載せた巌は枝に留まった梟のようで、その天窓大きく、尻ッこけになって幾千
仭とも弁えぬ谷の上へ、蔽い被さって斜に出ている。裾を蹈んで頭を叩けば、ただこの一....
「星女郎」より 著者:泉鏡花
座敷を並べ、鍵の手に鍵屋の店が一昔以前あった、片側はずらりと板戸で、外は直ちに千
仭の倶利伽羅谷、九十九谷の一ツに臨んで、雪の備え厳重に、土の廊下が通うのである。....
「怪しの館」より 著者:国枝史郎
伝法な口調である。 「が、一分でも遅れては駄目だ」不安そうな男の声である。 「九
仭の功を一|簣に欠くよ」 「百も承知さ」と嘲笑うように、「お前さんにいわれるまで....
「南蛮秘話森右近丸」より 著者:国枝史郎
というように、牀几にべッタリ腰かけてしまった。苦心が水泡に帰したのである。又九|
仭の功名を、一|簣に虧いてしまったのである。落胆するのは当然である。 しばらく....
「月世界跋渉記」より 著者:江見水蔭
る岩の上に這い出て下を見ていたが、立ち上ろうとする途端によろよろとして底知れぬ千
仭の谷に真倒様に落ちて終った。 晴次はこの有様に吃驚して、どうしようと度を失っ....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
事――」と道の中へ衝と出た、人の飛ぶ足より疾く、黒煙は幅を拡げ、屏風を立てて、千
仭の断崖を切立てたように聳った。 「火事だぞ。」 「あら、大変。」 「大いよ!」....
「四十年前」より 著者:内田魯庵
木を伐採したために不測の洪水を汎濫し、八方からの非難攻撃に包囲されて竟にアタラ九
仭の功を一簣に欠くの失敗に終った。が、汎濫した欧化の洪水が文化的に不毛の瘠土に注....