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「何処ともなく〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

何処ともなくの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
雛がたり」より 著者:泉鏡花
かかる折から、柳、桜、緋桃の小路を、麗かな日に徐と通る、と霞を彩る日光の裡に、何処ともなく雛の影、人形の影が※う、…… 朧夜には裳の紅、袖の萌黄が、色に出て....
蠅男」より 著者:海野十三
へ置いて山かげに姿を消してしまった。聞えていた飛行機のプロペラの音も、そのうちに何処ともなく聞えなくなった。 帆村と長吉とは、生命びろいをしたことに気がついた....
怪談牡丹灯籠」より 著者:三遊亭円朝
ら、又は薪箱の中へ潜り込むやら騒いでいる中に、源次郎お國の両人は此処を忍び出で、何処ともなく落ちて行く。後で源助は奥の騒ぎを聞きつけて、いきなり自分の部屋を飛び....
風流仏」より 著者:幸田露伴
石の奸物も此処面白からず、荒屋一トつ遺して米塩買懸りの云訳を家主亀屋に迷惑がらせ何処ともなく去りける。珠運も思い掛なく色々の始末に七日余り逗留して、馴染につけ亭....
富岡先生」より 著者:国木田独歩
じた、姫小松の生えた丘は静に日光を浴びている、その鮮やかな光の中にも自然の風物は何処ともなく秋の寂寥を帯びて人の哀情をそそるような気味がある。背の高い骨格の逞ま....
鵞湖仙人」より 著者:国枝史郎
だ。……ひとつ手段を変えることにしよう」 彼は竹藪からするすると出た。そうして何処ともなく立ち去った。 その翌朝のことである。 鵞湖仙人の屋敷を目掛け、一....
オフェリヤ殺し」より 著者:小栗虫太郎
に九十郎は、一夜離反者を前にして、激越極まる告別の辞を吐いた。そして、その足で、何処ともなく姿を晦ましてしまった――と云うのが、恰度二月ほどまえ、三月十七日の夜....
沙漠の古都」より 著者:国枝史郎
が羅布の沙漠へ襲って来て神の祠を破壊して経文の一部と羊皮紙と箱に納めた雄の球とを何処ともなく奪い去った。吾らの怒りは頂点に達し神に復讐の誓いをして、西班牙人の探....
多神教」より 著者:泉鏡花
で、清き半巾を袂にし、階段の下に、少時ぬかずき拝む。静寂。きりきりきり、はたり。何処ともなく機織の音聞こゆ。きりきりきり、はたり。――お沢。面を上げ、四辺を※し....
増上寺物語」より 著者:佐藤垢石
と、大戸の方からも、厨房の方からも十四、五人の武士が駆け込んできて、五千両の金を何処ともなく運び去ったのである。 土方晋は、後の土方伯であった。 翌年の七月....
入れ札」より 著者:菊池寛
を喰ったときは、二十七人しか残っていなかった。それが、五六人は召捕られ、七八人は何処ともなく落ち延びて、今残っている十一人は、忠次のためには、水火をも辞さない金....
闥の響」より 著者:北村四海
まり突然の事だから、吃驚して見ていると、先方でも何言も云わずにまた後方へ居って、何処ともなく出て行ってしまった、何分時刻が時刻だし、第一昨夜私は寝る前に確かに閉....
銀座の朝」より 著者:岡本綺堂
りて、服部の大時計の針が今や五時を指すと読まるる頃には、眠れる街も次第に醒めて、何処ともなく聞ゆる人の声、物の音は朝の寂静を破りて、商家の小僧が短夜恨めしげに店....
茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
きな音をたてる烈しい松籟が押し寄せることがある。彼等は慌しく吹き飛ばさるるように何処ともなく消え去ってしまう。人間によって彼は松毟鳥と名づけられた。 登るとも....
黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
十四、五米突も低い峰頭に、ばらばらになって三、四本残っている測量櫓の柱を掠めて、何処ともなく舞い連れて行く。視線の向う所は黒部川の上流を取り巻いて、天半に揺曳す....