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余燼
「余燼〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
余燼の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「深夜の市長」より 著者:海野十三
っていたから信用してもいい。その右腕は倉庫の水道口のところに転がっていて、明るい
余燼の火を浴びているのが見えたのだが、そこはやはりプスプス燃えている焼け跡の中だ....
「空襲葬送曲」より 著者:海野十三
どれを見ても、まるで墓石の下から出て来たような顔色をしていた。 風が出てきて、
余燼がスーと横に長引くと、異臭の籠った白い煙が、意地わるく避難民の行手を塞いで、....
「海野十三敗戦日記」より 著者:海野十三
した。そのときは第一機が投弾して、もう市街は炎々と燃えていたのである。 ◯今朝、
余燼が空中に在るせいか、天日黄ばんで見えたり。 ◯焼け跡も疎開も知らぬ桜哉 ....
「茶の本」より 著者:岡倉覚三
に雪村を包んで、大きく開いた傷口にこれを突っ込んだ。火事はついにしずまった。煙る
余燼の中に、半焼の死骸があった。その中に、火の災いをこうむらないで、例の宝物は納....
「金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
うとした。 復一はボートの中へ仰向けに臥そべった。空の肌質はいつの間にか夕日の
余燼を冷まして磨いた銅鉄色に冴えかかっていた。表面に削り出しのような軽く捲く紅い....
「聖アレキセイ寺院の惨劇」より 著者:小栗虫太郎
マノフの鷲が、ついに巨大な屍体を横たえたのであるが、その矢先に、この忘られ掛けた
余燼が赫っと炎を上げたと云うのは、荒廃し切った聖堂に、世にも陰惨な殺人事件が起っ....
「大阪夏之陣」より 著者:菊池寛
るのは当然である。せめて、冬の陣のままで四月か半年も頑張ったならば、当時は戦国の
余燼がやっと収まったばかりであるから、関ヶ原の浪人も多く、天下にどんな異変が生じ....
「灰燼十万巻」より 著者:内田魯庵
、風に煽られる度に焼けた頁をヒラ/\と飛ばしていた。其処此処の熱灰の中からは折々
余燼がチラ/\と焔を上げて、彼地此所に眼を配る消火夫の水に濡れると忽ち白い煙を渦....
「宝島」より 著者:佐々木直次郎
た。それは赤い熱そうな光で、時々少し暗くなり、――ちょうど、くすぶっている篝火の
余燼のようであった。 どうしても私にはそれが何なのかわからなかった。 とうと....
「堕落論」より 著者:坂口安吾
順な人間の姿は奇妙に美しいものである。麹町のあらゆる大邸宅が嘘のように消え失せて
余燼をたてており、上品な父と娘がたった一つの赤皮のトランクをはさんで濠端の緑草の....
「生死卍巴」より 著者:国枝史郎
と云っても相手を見ることは出来ない。深山の暗夜であるからである。焔は消えたが
余燼はあって、五六本の松火が地上に赤く、点々とくすぶってはいたけれど、光は空間へ....
「赤坂城の謀略」より 著者:国枝史郎
るに答える者はなく、駈け出して来る兵もなく、楠氏の陣営には、焚きすてられた篝が、
余燼を上げているばかりであった。 「正成一流のたばかりでもあろうぞ。油断して裏掻....
「二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
父の渋面、母の愚痴、人生問題の紛糾疑惑、心の隅の何処かに尚だ残ってる政治的野心の
余燼等の不平やら未練やら慚愧やら悔恨やら疑惑やらが三方四方から押寄せて来て、あた....
「涸沢の岩小屋のある夜のこと」より 著者:大島亮吉
と下りてゆくところだった。自分たちの右手の高きには前穂高の巓がなおさっきの夕焼の
余燼で灼やいて、その濃い暗紫色の陰影は千人岩の頭のうえまでものびていた。そしては....
「茶美生活」より 著者:北大路魯山人
点である。 率直に案じてみれば、今わずかに茶道のほんの一部だけが残って、心細く
余燼を燃やしているに過ぎないのではないのかとも考えられる点である。 私は先年、....