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「便り〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

便りの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
尾生の信」より 著者:芥川竜之介
た。が、女は未だに来ない。 尾生は水の中に立ったまま、まだ一縷《いちる》の望を便りに、何度も橋の空へ眼をやった。 腹を浸《ひた》した水の上には、とうに蒼茫《....
玄鶴山房」より 著者:芥川竜之介
るのはわしが自分でしめます。ここへ畳んで置いて行って下さい。」 玄鶴はこの褌を便りに、――この褌に縊《くび》れ死ぬことを便りにやっと短い半日を暮した。しかし床....
報恩記」より 著者:芥川竜之介
――この日は雪になりましたが、やはり夜《よ》に入ってしまった後《のち》も、何一つ便りはありません。わたしは前に甚内の約束は、当にして居らぬと申し上げました。が、....
邪宗門」より 著者:芥川竜之介
文を開けて御覧になると、一首の古歌がちらし書きにしてあるだけで、一言もほかには御便りがございません。 思へども思はずとのみ云ふなればいなや思はじ思ふかひなし....
奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
賑やかな家や朋輩《ほうばい》たちの顔を思い出すと、遠い他国へ流れて来た彼女自身の便りなさが、一層心に沁《し》みるような気がした。それからまた以前よりも、ますます....
魔術」より 著者:芥川竜之介
がせて来たのです。 私は雨に濡れながら、覚束《おぼつか》ない車夫の提灯の明りを便りにその標札の下にある呼鈴《よびりん》の釦《ボタン》を押しました。すると間もな....
妙な話」より 著者:芥川竜之介
わなかった事だ。「難有《ありがと》う。ただこの頃はどうなすったのだか、さっぱり御便りが来ないのでね。」――そう千枝子は赤帽に、返事さえもしたと云うのだ。すると赤....
おしの」より 著者:芥川竜之介
》を告げに来た天使のことを、厩《うまや》の中の御降誕のことを、御降誕を告げる星を便りに乳香《にゅうこう》や没薬《もつやく》を捧《ささ》げに来た、賢《かしこ》い東....
捨児」より 著者:芥川竜之介
信行寺の門前へ、泣く泣くその赤子を捨てて行きました。 「それからわずかの知るべを便りに、汽車にも乗らず横浜へ行くと、夫はある運送屋へ奉公をし、女はある糸屋の下女....
俊寛」より 著者:芥川竜之介
へ、円座《わろうだ》を御移しになりながら、 「では空腹が直ったら、都《みやこ》の便りでも聞かせて貰おう。」とわたしの話を御促《おうなが》しになりました。 わた....
星座」より 著者:有島武郎
は三隅さん母子と連れ立って南を向いて歩いた。 「星野さんがお帰りてから何んとかお便りがありましたか」 と大通り近くに来てからお袋が婆やに尋ねた。 「何があなた....
惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
成から成り立っている。それからお前が全く眼を退けて、私だけに注意するというのは、便りなくも心細くも思われることに違いない。然し私はお前に云う。躊躇するな。お前が....
クララの出家」より 著者:有島武郎
を隠した二人の男に守られながら、すがりつくようにエホバに祈祷を捧げつつ、星の光を便りに山坂を曲りくねって降りて行った。 フランシスとその伴侶との礼拝所なるポル....
アグニの神」より 著者:芥川竜之介
がめらめら燃えているばかり、人気のないようにしんとしています。 遠藤はその光を便りに、怯ず怯ずあたりを見廻しました。 するとすぐに眼にはいったのは、やはりじ....
良夜」より 著者:饗庭篁村
ば、これを徳として年々礼儀を欠ず頼もしき者なればとて、外に知辺もなければこの人を便りとしたりしなり。尋ね着きて伯父の手紙を渡せば、その人は受取りて表書の名を見る....