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俄に
「俄に〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
俄にの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「蜜柑」より 著者:芥川竜之介
たりと下へ落ちた。そうしてその四角な穴の中から、煤を溶したようなどす黒い空気が、
俄に息苦しい煙になって、濛々と車内へ漲り出した。元来|咽喉を害していた私は、手巾....
「三つの窓」より 著者:芥川竜之介
しはお願い致します。善行賞はお取り上げになっても仕かたはありません。」 下士は
俄に顔を挙げ、こう甲板士官に話しかけた。K中尉は思わず彼を見上げ、薄暗い彼の顔の....
「茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
してくる。眼前がきらきらして一しきりこれと定めて物を見極めにくくなる。そんな時|
俄にけたたましい音がして、落葉樹の間から山鳥が飛びあがることがある。彼の羽色は濃....
「化鳥」より 著者:泉鏡花
にも思われる。今に眼が覚めるのであろうと思ったようでもある、何だかぼんやりしたが
俄に水ん中だと思って叫ぼうとすると水をのんだ。もう駄目だ。 もういかんとあきら....
「照葉狂言」より 著者:泉鏡花
ざりき。あまり不意なれば、茫然として立ったるに、ふと思い出でしは野衾の事なりき。
俄に恐しくなりて踵を返す。通の角に、われを見て笑いながら彳みたるは、その頃わが家....
「遠野の奇聞」より 著者:泉鏡花
るよし、其方も聞及び給うかと尋ぬれば、後より来る若侍、その化物はかようの者かと、
俄に面替り眼は皿のごとくにて額に角つき、顔は朱のごとく、頭の髪は針のごとく、口、....
「取舵」より 著者:泉鏡花
異腹の兄弟の前途を危わしげに目送せり。 やがて遙に能生を認めたる辺にて、天色は
俄に一変せり。――陸は甚だ黒く、沖は真白に。と見る間に血のごとき色は颯と流れたり....
「野菊の墓」より 著者:伊藤左千夫
無遠慮に隔てのない風はなく、いやに丁寧に改まって口をきくのである。時には僕が余り
俄に改まったのを可笑《おか》しがって笑えば、民子も遂には袖で笑いを隠して逃げてし....
「阿Q正伝」より 著者:井上紅梅
雨傘に引く、前の黄傘格に対す)の徽章で翰林を抑えつけたんだと思っていた。趙太爺は
俄に肩身が広くなり倅が秀才に中った時にも増して目障りの者が無い。阿Qを見ても知ら....
「孔乙己」より 著者:井上紅梅
梃なもので、「君子固より窮す」とか「者ならん乎」の類だから衆の笑いを引起し店中|
俄に景気づいた。 人の噂では、孔乙己は書物をたくさん読んだ人だが、学校に入りそ....
「故郷」より 著者:井上紅梅
ん達は向うへ行ってお遊び」 宏兒はこの話を聞くとすぐに水生をさし招いた。水生は
俄に元気づいて一緒になって馳け出して行った。母は閏土に席をすすめた。彼はしばらく....
「不周山」より 著者:井上紅梅
り、また火の柱となり、真赤になって、崑崙山嶺の紅焔を圧倒するようになった。大風が
俄に起って、火の柱は巻き上ってうなり、青や色々な石は一様に赤くなり、飴のように、....
「六日月」より 著者:岩本素白
しくぽん/\いうだけの音である。急に夢が醒めたような気になって、なお歩いて行くと
俄に道がガランとして、だだっ広くなってしまった。夜目で分らないが、家を取払って道....
「松の操美人の生埋」より 著者:宇田川文海
答て曰く、團十郎は新富劇に出場せるが、該劇は近日炎帝特に威を恣にするを以て、昨日
俄に場を閉じ、圓朝は避暑をかねて、目今静岡地方に遊べりと。居士之を聞て憮然たるも....
「淡島椿岳」より 著者:内田魯庵
代となって自から下画を描いた事があるそうだ。軽焼屋の袋は一時好事家間に珍がられて
俄に市価を生じたが、就中淡島屋のは最も珍重されて菓子袋としては馬鹿げた高価を呼ん....