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俯せ
「俯せ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
俯せの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「運命」より 著者:幸田露伴
令数ありとするも、測り難きは数なり。測り難きの数を畏れて、巫覡卜相の徒の前に首を
俯せんよりは、知る可きの道に従いて、古聖前賢の教の下に心を安くせんには如かじ。か....
「スポールティフな娼婦」より 著者:吉行エイスケ
が色彩をあたえ、建設を急ぐ生糸市場の肋骨の下には市を代表する実業家が黒眼鏡に面を
俯せていた。しかし麗屋の市街にもかかわらず内容の空虚は殆んど収拾することのできな....
「棺桶の花嫁」より 著者:海野十三
あたしもそうなのよ」 ミチミはそれを鼻にかかった甘ったるい声でいって、眼を下に
俯せた。そこには単衣をとおして、香りの高いはち切れるような女の肉体が感ぜられる、....
「縷紅新草」より 著者:泉鏡花
真紅でしたわ、おとなになって今じゃ薄りとただ青いだけですの。」 おじさんは目を
俯せながら、わざと見まもったようにこういった。 「見えやしない、なにもないじゃな....
「虎狩」より 著者:中島敦
た両手をだらりと垂らして下を向いて歩いて行ったが、その時、ポツンと――やはり顔を
俯せたままで、こんなことを言出した。彼はまだ泣いていたので、その声も嗚咽《おえつ....
「腐った蜉蝣」より 著者:蘭郁二郎
ら、 『東洋劇場は何をやっているんだ、今――』 『ええと……』 友野は一寸眼を
俯せると、すぐすらすらと出し物をいった。しかし、その中にはネネの名はなかった。 ....
「正雪の遺書」より 著者:国枝史郎
、道場に掛けた看板も、 由井民部之助橘正雪張孔堂、十能六芸|伊尹両道、仰げば天文
俯せば地理、武芸十八般何流に拘らず他流試合勝手たる可き事、但し真剣勝負仕る可き者....
「地上」より 著者:島田清次郎
ったのだ」平一郎はこうたずねた。深井は耳の根元まで真紅に染めて羞恥のためか顔面を
俯せてしまった。動機に平一郎自身深い因縁と責任のあることは平一郎も思い及ばなかっ....
「京鹿子娘道成寺」より 著者:酒井嘉七
ったのでございます。中には、もう、変化になり終られた岩井半四郎が、被衣を冠って、
俯せになっております。これに、花四天がからみまして押戻しが出、そして、引っぱりの....
「P丘の殺人事件」より 著者:松本泰
疎《まばら》な木立を背景《バック》にした共同椅子の前へ出ると、コルトンが草の上へ
俯せになって仆《たお》れていた。其辺にはまだ火薬の臭が漂っていた。林は確にエリス....
「水晶の栓」より 著者:新青年編輯局
『コラッ、静かにしろ! 動くなッ!……アッ、畜生ッ……』 バッタリ床上に身を
俯せる刹那、三発の銃声、薄黒い室の片隅にパッと火花が散る。間もあらばこそ、書記の....
「贋物」より 著者:葛西善蔵
やはり心の中は咎められた。…… 下の谷間に朝霧が漂うて、アカシアがまだ対の葉を
俯せて睡っている、――そうした朝早く、不眠に悩まされた彼は、早起きの子供らを伴れ....
「三国志」より 著者:吉川英治
して、檻車の中に、揺られてくるのは、熊でも豹でもなかった。膝を抱いて、天日に面を
俯せている、あわれなる人間であった。 ばらばらっと、先頭から、一名の隊将と、一....
「三国志」より 著者:吉川英治
。華※はあわてて几の下からそっと曹丕の手へ何か書いたものを渡した。曹丕は眼をふと
俯せてそれを見ると、たちまち声を高めて次の難題を出した。 「植っ。起て――そして....
「三国志」より 著者:吉川英治
の混乱も蹄にかけて、ただ右手なる鞭を絶え間なく、馬の尻に加えていた。身を鬣へ打ち
俯せ、眼は空を見ず、心に天冥の加護を念じ、ほとんど、生ける心地もなく走った。 ....