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倏
「倏〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
倏の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「梓川の上流」より 著者:小島烏水
、蝶には何でもないのか、虚空の童女は、つと水底の自分を捉えようとして、飛びつくと
倏《たちま》ち渦まく水に捉えられた、一、二間流されながらも濡れ羽を震って悶えた、....
「京に着ける夕」より 著者:夏目漱石
、緑の底に空を映さぬ暗い池へ、落ち込んだようなものだ。余はしゅっと云う音と共に、
倏忽《しゅっこつ》とわれを去る熱気が、静なる京の夜に震動を起しはせぬかと心配した....
「神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
信徒一千と註されたところの富士教団が建設された。 そうしてさらに六年の月日が、
倏忽して過ぎ去った時、土屋庄三郎昌春が、この教団へ紛れ込んだのである。 富士教....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
て食卓から立って妻児が下りて来た頃は、北天の一隅に埋伏し居た彼濃い紺※色の雲が、
倏忽の中にむら/\と湧き起った。何の艶もない濁った煙色に化り、見る/\天穹を這い....
「浮雲」より 著者:二葉亭四迷
おつき》をして、 「モシ罷めになッたら……」 ト取外《とりはず》して言いかけて
倏忽《たちまち》ハッと心附き、周章《あわて》て口を鉗《つぐ》んで、吃驚《びっくり....
「十二支考」より 著者:南方熊楠
す、少頃《しばし》虫|蠕々《ぜんぜん》長きがごとし、竅中《きょうちゅう》泉湧き、
倏忽《しゅっこつ》自ずから盤《わだかま》る、一席のごとく黒気あり香煙のごとし、た....
「八ヶ嶽の魔神」より 著者:国枝史郎
襲い、鶏や穀物や野菜などを巧みに盗んで来たりした。 こうしてまたも五年の月日が
倏忽として飛び去った。そうして猪太郎は十歳となったがその体の大きさは十八、九歳の....
「神秘昆虫館」より 著者:国枝史郎
うそれだけしか聞こえなかった。立ち去る足音もしなかった。声だけが突然土から生れ、
倏忽《しゅっこつ》と空へ消えたようであった。 風が少しく強まったらしい。藪がザ....
「樋口一葉」より 著者:長谷川時雨
なるまで洩《も》れるのは、彼女の創作のためばかりではなかった。あの、筆をもてば、
倏忽《たちどころ》に想をのせて走る貴《とうと》い指さきは、一寸の針をつまんで他家....
「赤格子九郎右衛門の娘」より 著者:国枝史郎
盗賊の群は今から数えて半年程前から大阪市中へは現われたのであって、一旦現われるや
倏忽の間にその勢力を逞しゅうし、大阪市人の恐怖となった。 噂によれば彼等の群は....
「日蔭の街」より 著者:松本泰
走ってゆくところであった。物見高い群衆が刻々に謂集《あつま》ってきて、狭い露路は
倏忽《たちまち》黒山のようになった。私は人垣の間を潜って、ようやく前へ出た。見る....
「緑衣の女」より 著者:松本泰
《やや》明るくなりかけていた気持が大きな掌《たなごころ》で押えつけられたように、
倏忽《たちまち》真暗になって了った。 泉原はデンビ町の下宿へ帰る積りであったが....
「チチアンの死」より 著者:木下杢太郎
に、夕風のうちに立つ遠い樹の茂りのおもしろさ……。 パリス 青い入江を行き過ぐる
倏忽の白帆のかげに美を覚り……。 チチアネルロ (軽く首を下げて少女たちに会揖し....
「二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
全人格を他にも自分にも明白に示さないで、あたかも彗星の如く不思議の光芒を残しつつ
倏忽として去ってしまった。渠は小説家でなかったかも知れないが、渠れ自身の一生は実....
「黒部川を遡る 」より 著者:木暮理太郎
らゆる筋肉の働と、集注的な強い意識とを必要とする。 一滴二滴と雨が落ちて来た。
倏にして太い銀針のような雨脚があたりを真白にしてしまう。折々電光が物騒しく動揺す....