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「倒影〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

倒影の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
上高地風景保護論」より 著者:小島烏水
も知れぬ、人間霊魂の内部に潜在する自然に対する驚異の心の消耗は、やがて人情の上に倒影して、恐怖すべきほど、乾燥にして露骨なる時代を、荒廃の谷地に象徴されはしまい....
アッシャー家の崩壊」より 著者:佐々木直次郎
菅草や、うす気味のわるい樹の幹や、うつろな眼のような窓などの、水面にうつっている倒影を見下ろした、――が、やはり前よりももっとぞっとして身ぶるいするばかりであっ....
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
に、じとじと泥濘んでいるので、その上には銀色をした鞍のような形で、中央の張出間が倒影していた。のみならず、焼け残りの部分が様々な恰好で、焦土の所々に黄色く残って....
人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
嶺の奥ふかくへと、橇をまっしぐらに走らせてゆく。まばゆい、曼珠沙華のような極光の倒影。吹雪、青の光をふきだす千仭の氷罅。――いたるところに口を開く氷の墓の遥かへ....
一本の花」より 著者:宮本百合子
で手が空き、窓から濠の景色を眺めている。浅く揺れる水の面に、石垣とその上の芝との倒影がある。水に一しお柔かな緑が、朝子の活字ばかり見ていた眼に、休安を与える。微....
丸善と三越」より 著者:寺田寅彦
らく来ない時には、河岸の砂利置場へはいってお堀の水をながめたり呉服橋を通る電車の倒影を見送ったりする。丸善の二階で得たいろいろな印象や、三越で受けたさまざまな刺....
めでたき風景」より 著者:小出楢重
槽があった。私は何気なくその水面を眺めながら洗っていると、そこへゆらゆらと美女の倒影がいくつもいくつも現われるのであった。私は友人を招いて水面を指した、彼はなる....
厄年と etc.」より 著者:寺田寅彦
始めて得た翼を虚空に羽搏きする。 劣者の道の谷底の漸近線までの部分は優者の道の倒影に似ている。そして谷底まで下りた人の多数はそのままに麓の平野を分けて行くだろ....
後光殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
一同は本堂に向ったが、その途中、瀝青色をした大池の彼方に、裏手の雫石家の二階が倒影している。本堂の左端にある格子扉をあけると、四坪程の土間から黒光りした板敷に....
源氏物語」より 著者:紫式部
のが見渡される奥には、晴れやかに起き伏しする河添い柳も続いて、宇治の流れはそれを倒影にしていた。都人の林泉にはないこうした広い風景を見捨てて帰りがたく思召される....
源氏物語」より 著者:紫式部
た所を御覧になると、大きい岩のような形に見えて常磐木のおもしろい姿に繁茂した嶋が倒影もつくっていた。 「あれを御覧なさい。川の中にあってはかなくは見えますが千年....
貞操問答」より 著者:菊池寛
雲で包まれているのに、街の裾から、カッと落日の光がさし込んで、暗い通りに、建物の倒影が、クッキリ落ち、行きずりの人の顔など、眩しいほど、鮮に見える。バサバサと葉....
沙漠の古都」より 著者:国枝史郎
龍も雷龍もトラコドンも大砲の音に驚いたと見えて水から姿を出そうともしない。樹々の倒影、雲の往来、みんな水中に映っている。 風が窃かに渡ったと見えて水面に漣がも....
『唯研ニュース』」より 著者:戸坂潤
、色彩の或る程度以上の誇張はインチキ性を孕んで来るが、併し写真機の暗箱の底に写る倒影に見られる程度の光彩の集中は、慥かに良いものだ。 テクニカラーと色彩別を利....
春の大方山」より 著者:木暮理太郎
い。唯晴れた日に是等の湖水の北岸を通ると、絶えず秀麗なる富士の姿を頭上に仰ぎ、其倒影を湖心に眺めるのが他に見られぬ特色である。富士なくしては確に湖水の価値を牛ぱ....