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偸み
「偸み〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
偸みの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「邪宗門」より 著者:芥川竜之介
っすり睡入《ねい》って居《お》るのでございましょう。私と甥とが足音を偸《ぬす》み
偸み、静にその小屋の前を通りぬけました時も、蓆壁《むしろかべ》の後《うしろ》には....
「幽霊塔」より 著者:黒岩涙香
物に隔てられて余の所からは見えぬ、先からも余を見る事は出来ぬ筈だ、余は人の密話を
偸み聴くは好まぬから密と立ち去り度く思ったけれど、既に遅い、男女は早や余と一間と....
「無惨」より 著者:黒岩涙香
など云える悪人多からずば其職繁昌せず、悪人を探す為に善人を迄も疑い、見ぬ振をして
偸み視、聞かぬ様をして
偸み聴、人を見れば盗坊と思えちょう恐き誡めを職業の虎の巻と....
「血の文字」より 著者:黒岩涙香
り、殊に又美人の操ほど当に成らぬ者は無く厳重なる貴族社会に於てすらも幾百人の目を
偸みて不義の快楽に耽りながら生涯人に知れずして操堅固と褒らるゝ貴婦人も少なからず....
「縮図」より 著者:徳田秋声
かわらず、どこか理窟に合わないこともなさそうであった。 銀子は主人や婆やの目を
偸みながら、急速度で読んで行った。 「一片のパンから、こんなことになるものかな。....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
て、どこに何が仕舞ってあるのかもよく知っていた。しかし加世子も気づいていた持前の
偸み癖がだんだん無遠慮になって来たところで、それもいつか遠ざけてしまった。 あ....
「中国怪奇小説集」より 著者:岡本綺堂
れがしばしば紛失するので、あるときそっと窺っていると、一匹の大きい蛇が忍び寄って
偸み食らうのであった。彼は大いに怒って、長柄の鎌をもって切り付けると、蛇は傷つい....
「足」より 著者:豊島与志雄
器か消化器かが悪い者のようで、眼の光が疲れて、黝ずんでいた。 彼は私の顔を時々
偸み見ながら、ゆっくりした調子で云っていた。 「どういうものか、横になると膝から....
「阿亀」より 著者:豊島与志雄
やって来ながら、僕はそんな風に平気を装ったが、何かしら落着けなかった。お久の方を
偸み見ると、斜め向う向きに、束髪の大きな鼈甲ピンをつんとさして、固くなって控えて....
「白光」より 著者:井上紅梅
放した。下顎の骨はふらふらと坑の底へ帰ってゆくと同時に彼は中庭に逃げ出した。彼は
偸み眼して部屋の中を覗くと、燈光はさながら輝き、下顎の骨はさながら冷笑っている。....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
注目を受けていることを感じながら、わずかに顔を振り向けようとする時、そっと隣りを
偸み見ると、その人は婆さんがかつて愛していて、四十五年前にもう死んでいるはずの騎....
「おせん」より 著者:邦枝完二
でこう呟いた春重は、それでも爪を煮込んでいる薬罐の傍から顔を放さずに、雨戸の方を
偸み見た。陽は高々と昇っているらしく、今さら気付いた雨戸の隙間には、なだらかな日....
「小坂部姫」より 著者:岡本綺堂
ばたに蹴倒されて這いかがまっている間に、目ざす二人を捕り損じ討ち損じた彼等の話を
偸み聴いて、その秘密をあらまし想像したのであった。 「わたくしが推量には、誰かが....
「青春の息の痕」より 著者:倉田百三
は今朝本当に久しぶりに二分間ほど干棚に出て街の上にかかる青空と遠い山脈の断片とを
偸み見ましたが、もう春が地上に完全に支配しているのを見て驚いたほどでした。あなた....
「飛騨の怪談」より 著者:岡本綺堂
、何となく不気味の感が無いでもなかった。窟の奥から窃と抜け出して、先ず表の有様を
偸み視ると、夜は既う更けたらしい、山霧は雨となって細かに降っている。お杉は消えか....