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偽り
「偽り〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
偽りの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
ず。……」
けれどもこう言う見すぼらしさよりも更に彼の憎んだのは貧困に発した
偽りだった。母は「風月」の菓子折につめたカステラを親戚《しんせき》に進物にした。....
「或る女」より 著者:有島武郎
きそうにさえなった。葉子は前どおりすすり泣きを続けてはいたが、その涙の中にはもう
偽りのしずくすらまじっていた。
「いやです放して」
こういった言葉も葉子にはど....
「或る女」より 著者:有島武郎
に幾人も客を迎える物珍しさに有頂天《うちょうてん》になっていたようだった。満面に
偽りのない愛嬌《あいきょう》を見せながら、丁寧にぺっちゃんとおじぎをした。そして....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
白をしながら、基督のいう意味に於て、正しく盗みをなし、姦淫をなし、人殺しをなし、
偽りの祈祷をなしていたではないか。お前の行いが疚ましくなると「人の義とせらるるは....
「春の潮」より 著者:伊藤左千夫
こういう場合に意志の交換だけで、日を送っていられるくらいならば、交換したことばは
偽りに相違ない。抑えられた火が再び燃えたった時は、勢い前に倍するのが常だ。 そ....
「去年」より 著者:伊藤左千夫
。心をまげ精神を傷つけ一時を弥縫した窮策は、ついに道徳上の罪悪を犯すにいたった。
偽りをもって始まったことは、
偽りをもって続く。どこまでも公明に帰ることはできない....
「鍵から抜け出した女」より 著者:海野十三
後からきっと連れていってあげますわ」 庵主のいかにも自信ありげな言葉は、まさか
偽りではなさそうに見えた。僕はこの上はすべての運命を、再生の恩人の庵主に委せ、な....
「階段」より 著者:海野十三
ら、拾い集めて居ただけなんです」と答えたが、その答えぶりから言ってそれは明らかに
偽りであることが判った。 その次に僕は佐和山女史に、それとなく話しかけた。 「....
「恐しき通夜」より 著者:海野十三
死と同格の栄誉を担ったわけだった。だが此処に話がある! 儂は僚友のために、実は
偽りの報告をしたのだった。事実はこうだった、いいかね。あのとき、洋上を飛翔してい....
「蠅」より 著者:海野十三
いるというのである。男性が妊娠する――なんて、誰も本当にしないであろうが、これは
偽りのない事実である。ああなんという忌わしき、また恐ろしいことではないか。男性に....
「三人の双生児」より 著者:海野十三
。それよりも妾には真一がここで死んでいることが迷惑千万であったのである。――妾は
偽りなくその心境を語った。 「これは奥さまの想像していらっしゃるよりも面倒なこと....
「雷」より 著者:海野十三
追わせてやるぞ。雷に撃たれてから気がつくがいい。赤外線映画を撮るなどとは、真赤な
偽りで、ただこの雷よせの櫓を作りたかったためなんだ。天下に誰が、この俺の考えた奇....
「東京要塞」より 著者:海野十三
御礼はいたします」 「その御心配には及びませんよ」 そういったこの男の言葉は、
偽りがなかった。自分で抛げこんで置いて、自分で助けたんだから、礼をされる筋合はな....
「浮かぶ飛行島」より 著者:海野十三
甲板にあつめられた。 リット少将よりお礼の言葉があるという噂だった。 それは
偽りではなかった。 リット少将は、一段と高い壇上にのぼり、マイクを前にして立っ....
「卵塔場の天女」より 著者:泉鏡花
いう人の息子が一人、あとをつけて謡ったのを。 ――シテ「いや疑は人間にあり、天に
偽りなきものを―― 気のせいか、チョッと舌打をしたように思ったが、それは僻耳で....