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「僻耳〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

僻耳の前後の文節・文章を表示しています。該当する13件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
婦系図」より 著者:泉鏡花
ばかり、(皆健康か。)は尋常事でない。けれども、よもや、と思うから、その(皆)を僻耳であろう、と自分でも疑って、 「はい?」 と、聞直したつもりを、酒井がその....
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
しに樺色の光がさして居る。余は耳を澄ました。人のうめき声がしたかと思うたが、其は僻耳であったかも知れぬ。父は熟睡して居るのであろう。其子の一人が今病室の光を眺め....
浮雲」より 著者:二葉亭四迷
叔母の言艸《いいぐさ》を愛想尽《あいそづ》かしと聞取ッたのは全く此方《こちら》の僻耳《ひがみみ》で、或は愚痴で有ッたかも知れん」ト云う所に文三気が附いた。 こ....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
と、声とが起りました。 「今、人殺しと言ったなあ、たしかにここいらだぜ、おいらの僻耳《ひがみみ》じゃねえんだ」 こう言って駈けて来る人は一人だが、その後ろに附....
錦染滝白糸」より 著者:泉鏡花
駒、空におがんでいなければならないんだのに。女にうまれた一生の思出に、空耳でも、僻耳でも、奥さん、と言われたさに、いい気になって返事をして、確に罰が当ったんです....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
空気と、調子が、お雪の耳についてなりません。 最初のうちは、無論、それを自分の僻耳《ひがみみ》とばかり、問題にはしませんでしたが、あんまり長く続くものですから....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
久助はお雪をかかえて、身体《からだ》を固くする。 しかし、人の足音と思ったのは僻耳《ひがみみ》でしょう。そうでなければ表の戸を守っている主《あるじ》と、駕籠屋....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
々おたずね致したいのは」 ここまで明瞭に呼びかけられてみると、もう空耳だとか、僻耳《ひがみみ》だとか、自分の感覚を疑ってはおられない。 「どなたでござる」 「....
源氏物語」より 著者:紫式部
供が、どうしたのでございますか私の祖父の親王によく似た音を出します。それは法師の僻耳《ひがみみ》で、松風の音をそう感じているのかもしれませんが、一度お聞きに入れ....
源氏物語」より 著者:紫式部
き風にはしをれざらまし 弱竹をお手本になさい」 と言ったと思ったのは、中将の僻耳であったかもしれぬが、それも気持ちの悪い会話だとその人は聞いたのであった。 ....
多神教」より 著者:泉鏡花
ような声がしまするで、話に聞く、咒詛の釘かとも思いました。なれど、場所|柄ゆえの僻耳で、今の時節に丑の刻参などは現にもない事と、聞き流しておったじゃが、何と先ず....
卵塔場の天女」より 著者:泉鏡花
、天に偽りなきものを―― 気のせいか、チョッと舌打をしたように思ったが、それは僻耳であったろう、やっと静々と、羽衣を着澄して、立直ったのを視て、昨夜紅屋の霜に....
ファウスト」より 著者:ゲーテヨハン・ヴォルフガング・フォン
波の中、静けさの中より我を醒ましつ。 ファウスト(川に立ち寄る。) 己の僻耳でないなら、この木立、 この梢の入り違った茂の中から、 人の声に似た物音が ....