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先を争う
「先を争う〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
先を争うの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「紅黄録」より 著者:伊藤左千夫
さびしさをそえる。子どもらふたりの心に何のさびしさがあろう。かれらは父をさしおき
先を争うて庭へまわった。なくなられたその日までも庭の掃除はしたという老父がいなく....
「空襲葬送曲」より 著者:海野十三
る洪水のような円タクの流れもハタと止り、運転手も客も、自動車を路傍に捨てたまま、
先を争うて高声器の前に突進した。 電車も、軌道の上に停車したまま、明るい車内に....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
云われない。
勝手の方で、飯をやる合図の口笛が鳴ったので、犬の家族は刎ね起きて
先を争うて走って往った。主人はやおら下駄をぬいで、芝生の真中に大の字に仰臥した。....
「蒸発皿」より 著者:寺田寅彦
であろう。これと似たことが人生行路にもありはしないかと思う。 それはとにかく、
先を争うて押し合う心理も昇降機の場合にはたいした恐ろしい結果は生じない。定員人数....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
七顛八倒しながら、かの上り口のところへ押しかけて、前にお角と船頭とがしたように、
先を争うて甲板の上へ走り出そうとして、押し合い、へし合い、蹴飛ばされ、踏み倒され....
「爆薬の花籠」より 著者:海野十三
やかになって見える。 だが、それからさらに時刻がうつると、窓の灯は、しだいに、
先を争うように消えて行き、そして午後八時ごろになると、ぽつんぽつんと、のこりの灯....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
たよ、怖《こわ》い、親方さん、力持のおせいさん」 美人連は号泣する。折助どもは
先を争うて梯子からこの美人国へ乱入しようとして、わーっと喚《わめ》いて折重なって....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
》れているのではなく、噛み合っているのでした。いずれが早く火に触れようかとして、
先を争うて噛み合っているのに違いない。 その時、提灯の火がパッと消えました。二....
「怪奇人造島」より 著者:寺島柾史
く。あと、一時間と経たぬうちに、洋上の浮島は、跡形もなく消え失せるだろう。人々は
先を争うて、白堊の建物へのがれたが、果して方船は人々を収容して、海洋に浮び、潮流....
「レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
し混乱して街路の先端に退却し、再び闇夜《やみよ》のうちに見えなくなってしまった。
先を争う潰走《かいそう》だった。
防寨《ぼうさい》は回復された。
五 ジャン....
「次郎物語」より 著者:下村湖人
がちがっていた。いつもだと、朝倉先生が、「では、だれからでも……」と口をきると、
先を争うようにして幾人かの塾生が手をあげるのだったが、今日は、それどころか、かん....
「おばけずきのいわれ少々と処女作」より 著者:泉鏡花
食に窮せざるものはない有様で、近江新報その他の地方新聞の続き物を同人の腕こきが、
先を争うてほとんど奪い合いの形で書いた。否な独り同人ばかりでなく、先生の紹介によ....
「チベット旅行記」より 著者:河口慧海
ない。けれどもそれも自然と慣れるです。そうしてこっちが其便を済まして来ますと犬は
先を争うてその人糞を喰いに来る。だから西北原の内には便所はないけれど人糞の転がっ....
「ファウスト」より 著者:ゲーテヨハン・ヴォルフガング・フォン
襲われた時、
愛くるしい娘の子が両の腕に力を籠めて、
あなたの頸に抱き附いた時、
先を争う駆足に、遥か向うの決勝点から
名誉の輪飾があなたをさしまねいた時、
旋風....
「濹東綺譚」より 著者:永井荷風
時から雑沓《ざっとう》する電車に飛乗り、雑沓する百貨店や活動小屋の階段を上下して
先を争うことに能《よ》く馴《な》らされている。自分の名を売るためには、自ら進んで....