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入相の鐘
「入相の鐘〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
入相の鐘の前後の文節・文章を表示しています。該当する11件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「両国の秋」より 著者:岡本綺堂
はどう説き付けたかお絹を誘い出して向島へ駕籠で行った。豊吉のいった通り、浅草寺の
入相の鐘が秋の雲に高くひびいて、紫という筑波山《つくば》の姿も、暮れかかった川上....
「般若心経講義」より 著者:高神覚昇
この修慧がいちばんほんとうの智慧です。 耳にきき心におもい身に修せばいつか菩提に
入相の鐘 という古歌は、まさしくさとりへの道をうたったものです。 かように、....
「風流仏」より 著者:幸田露伴
\と祈る落花のおもしろきをも眺むる事なくて、見ぬ天竺の何の花、彫りかけて永き日の
入相の鐘にかなしむ程|凝り固っては、白雨三条四条の塵埃を洗って小石の面はまだ乾か....
「海神別荘」より 著者:泉鏡花
いたします。……聞く人一しおいたわしく、その姿を見おくりけるに、限ある命のうち、
入相の鐘つくころ、品かわりたる道芝の辺にして、その身は憂き煙となりぬ。人皆いずれ....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
に、和歌浦《わかのうら》の深みへ身を投げて死んでおしまいなすった」 紀三井寺の
入相の鐘の音《ね》というところに妙に節をつけて――つまり鳴物入《なりものい》りで....
「南北の東海道四谷怪談」より 著者:田中貢太郎
りと締って出られなかった。 八 隠亡堀の流れの向うに陽が落ちて、
入相の鐘がわびしそうに響いて来た。深編笠に顔をかくした伊右衛門は肩にしていた二三....
「土地」より 著者:豊島与志雄
なく立上って、ただ機械的に鶴嘴を振い初めた。 太陽が西の山の端に沈んで、遠くに
入相の鐘が鳴り出すと、平助はすぐに仕事を切上げた。そして二人は荒地の側の小川で、....
「桜花を詠める句」より 著者:杉田久女
。何だか智月おばあさんのこんな繰言を聞いている様で、何の詩感も味う事が出来ない。
入相の鐘にやせるか山桜 智月 山寺の鐘のねにさそわれて花のおびただしく散りい....
「高瀬舟」より 著者:森鴎外
女を殺して、自分だけ生き残った男というような類である。 そういう罪人を載せて、
入相の鐘の鳴るころにこぎ出された高瀬舟は、黒ずんだ京都の町の家々を両岸に見つつ、....
「小坂部姫」より 著者:岡本綺堂
き返して行った。兼好は粟を洗ってしまって、さらに蕪を刻み始めると、どこやらの寺で
入相の鐘を撞き出した。うす寒い風が岡の麓から吹きあげて来た。 「御庵主、物もう。....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
か。では、こういたそう。これへ来て、初瀬詣でをせずに過ぎるも心ないわざ。わしは、
入相の鐘のなる頃、ふたたび、ここへ帰って来る。まちがいなく、お夫婦もここにいてく....