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全景
「全景〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
全景の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「聖アレキセイ寺院の惨劇」より 著者:小栗虫太郎
雪水が容赦なくはねかかった。やがて、幾百と云う氷柱で薄荷糖のように飾り立った堂の
全景が、朧気に闇の中へ現われた。 出入口の把手を捻ってみると鍵が下りているので....
「千曲川のスケッチ」より 著者:島崎藤村
ぬけて、田圃側の細道へ出た。そこまで行くと、荒町、与良町と続いた家々の屋根が町の
全景の一部を望むように見られる。白壁、土壁は青葉に埋れていた。 田圃側の草の上....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
うとう、彼は信濃と美濃の国境にあたる一里塚まで、そこにこんもりとした常磐木らしい
全景を見せている静かな榎の木の下まで歩いた。 第九章 一....
「惜別」より 著者:太宰治
のの如く思われて、甚だ残念、とにかくこれから富山に登って、ひとり心ゆくまで松島の
全景を鳥瞰し、舟行の失敗を埋合わせようと考え、山に向っていそいだものの、さて、富....
「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」より 著者:寺田寅彦
らかなパリの騒音を暗示する音楽が大波のようにわき上がり、スクリーンにはパリの町の
全景が映出される。ここの気分の急角度の転換もよくできている。 モーリスがシャト....
「火星探険」より 著者:海野十三
》えている。八つの目は、遙かに下方に向けられている。下には美しいコロラド大峡谷の
全景があった。 ふしぎだ。夢を見ているのではなかろうか。地階の窓から、コロラド....
「反抗」より 著者:豊島与志雄
返した。高く動悸してる胸を押し鎮めていると、頭の中に罩めていた靄が消えて、過去の
全景が遠くまで見渡された。凡てが空《むな》しかった。空しい中にただ一つ、吉川の黒....
「幻の彼方」より 著者:豊島与志雄
心地に似ていた。 運命! とでも云えるものが、頭の上にじかに感ぜられた。過去の
全景が、影絵のように浮出してきた。秋子の儚い運命が、茫と燐光を放っていた。順一の....
「現代小説展望」より 著者:豊島与志雄
景の――ひいては漁夫の生活の――にじみ出し方が甚だ稀薄なのを、嘆ぜざるを得ない。
全景が可なりよく捉えられてはいるが、情景の――生活の――個性的濃度が乏しい。そし....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
喜ぶ彼の知力、その知力自身の広さのうちにあった。オリヴィエは事物を、一種歴史的な
全景《パノラマ》的な見地からながめていた。すべてを理解したいとの念から、可否の両....
「レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
直角。土地の高低もなければ、建築の彩《あや》もなく、一つの襞《ひだ》さえもない。
全景が氷のようで規則的で醜くかった。およそ均斉《シンメトリー》ほど人の心をしめつ....
「カストリ社事件」より 著者:坂口安吾
口に受附をつくらねばならぬ。入口の扉をあける。ビルの一室を占めているカストリ社の
全景は、ただちに見晴らしではないか。これは怪しからん。 「ねえ、先生、ウアッ、怪....
「私の活動写真傍観史」より 著者:伊丹万作
といままで岡の一部を背景にした全身の芝居であつたのが、今度は大ロングになつて岡の
全景が現われ、芝居は岡の上下をふくむ範囲において行われるようになつた。 弁士が....
「上野」より 著者:永井荷風
したものであった。 茅町の岸は本郷向ヶ岡の丘阜を背にし東に面して不忍池と上野の
全景とを見渡す勝概の地である。然しわたくしの知人で曾てこの地に卜居した者の言う所....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
ことなく、その風光の美は二者伯仲の間におる。ただ遺憾なるは、雨のために遮られて、
全景に接するを得ざるにあり。 峡間一路截声、残雪白辺春自満、岩陰已見緑苔生。 (....