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其奴
「其奴〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
其奴の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「婦系図」より 著者:泉鏡花
両国行の電車で、百円ばかり攫徒に掏られたです。取られたと思うと、気が着いて、直に
其奴を引掴えて、車掌とで引摺下ろしたまでは、恐入って冷却していたその攫徒がだね、....
「春昼」より 著者:泉鏡花
、何んとなく物寂しい、快からぬ、滅入った容子に見えて、ものあわれに、命がけにでも
其奴らの中から救って遣りたい感じが起った。家庭の様子もほぼ知れたようで、気が揉め....
「かんかん虫」より 著者:有島武郎
見ながら、押しつぶした儘の声で、 見ろい、あの切目の長げえ眼をぎろっとむいて、
其奴が血走って、からっきし狂人見てえだった。筋が吊ったか舌も廻ら無え、「何んだっ....
「紅玉」より 著者:泉鏡花
様のその指環を、掌に載せまして、凝と見ていましたのでございます。 紳士 餓鬼め、
其奴か。 侍女 ええ。 紳士 相手は
其奴じゃな。 侍女 あの、私がわけを言って、....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
をした方が、寝てでござんす、ちっと傍へ)と……まあ、難産の嫁御がそう言わしっけ。
其奴に、負けるな、押潰せ、と構わず褥を据えましたが、夜露を受けたが悪かったか、も....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
。) と六畳の表座敷で低声で言うんだ。――ははあ、商売も大略分った、と思うと、
其奴が (お誂は。) と大な声。 (あっさりしたものでちょっと一口。そこで……....
「白金之絵図」より 著者:泉鏡花
配のお嬢さんに惚れやあがってね。」 「ああ、あの別嬪さんの。」 「そうよ、でね、
其奴が、よぼよぼの爺でね。」 「おや、へい。」 「色情狂で、おまけに狐憑と来てい....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
ますえ。」 「それそれそこに、それ、主たちの廻りによ。」 「あれえ、」 「およそ
其奴等がなす業じゃ。夜一夜踊りおって騒々しいわ、畜生ども、」 とハタと見るや、....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
も、ばさばさと遁出すわ、二疋ずつの、まるでもって※蟷螂が草の中から飛ぶようじゃ。
其奴の、目星い処を選取って、縦横に跡を跟けるわい。ここぞという極めが着いた処で、....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
まあ、膝ぐらいな処まで、その水へ入って、そっと、目高か鮒か、掬ってる小児がある。
其奴が自分で。――ああ、面白そうだと思うと、我ながら、引き入れられて、身節がなえ....
「星女郎」より 著者:泉鏡花
憑いた男どもが、眉間尺のように噛合ったまま、出まいとして、乳の下を潜って転げる、
其奴を追っ懸け追っ懸け、お綾が擦ると、腕へ辷って、舞戻って、鳩尾をビクリと下って....
「一利己主義者と友人との対話」より 著者:石川啄木
A まあさ。「とうとう飽きたね」と君に言うね。それは君に言うのだから可い。おれは
其奴を自分には言いたくない。 B 相不変厭な男だなあ、君は。 A 厭な男さ。おれ....
「春昼後刻」より 著者:泉鏡花
も話しませんから、知ろう道理はないのです。但礼をおっしゃるかも知れんというから、
其奴は困ったと思いましたけれども、此処を通らないじゃ帰られませんもんですから。こ....
「三枚続」より 著者:泉鏡花
、お夏さんもそういって話しなすったが、山河内の姫様というと一件ものの女ですっさ。
其奴を煽がされるなんて可哀相じゃアありませんか。 いいえね、竜宮の乙姫てえ素ば....
「活人形」より 著者:泉鏡花
なるに、警察を尋ねて見ばやと、宿を出づれば後より一人|跟け来る男あり。忘れもせぬ
其奴こそ、得三に使わるる八蔵という悪僕なれば、害心もあらんかと、用心に用心して、....