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冴
「冴〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
冴の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「春」より 著者:芥川竜之介
か一々数えるにも足らぬ無数の事実を発見した。しかし彼女の顔色は何も気づかぬように
冴《さ》え
冴《ざ》えしていた。
「今日《きょう》は勝手なことをお願い申しまして、....
「邪宗門」より 著者:芥川竜之介
《へんげ》の物が出没致す事はございますまい。」
すると若殿様はまた元のように、
冴々《さえざえ》した御笑声《おわらいごえ》で、
「いや、何とも申されぬ。現に延喜....
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
。お蓮は牧野が寝入った後《のち》、何故《なぜ》かいつまでも眠られなかった。彼女の
冴《さ》えた眼の底には、見た事のない牧野の妻が、いろいろな姿を浮べたりした。が、....
「首が落ちた話」より 著者:芥川竜之介
刀の鋼《はがね》である。その音が煮えくり返るような周囲の騒ぎの中に、恐しくかんと
冴《さ》え渡って、磨いた鉄の冷かな臭《におい》を、一度に鋭く鼻の孔の中へ送りこん....
「或日の大石内蔵助」より 著者:芥川竜之介
情が、徐《おもむろ》に彼をつつんで来るのを意識した。このかすかな梅の匂につれて、
冴《さえ》返る心の底へしみ透って来る寂しさは、この云いようのない寂しさは、一体ど....
「或恋愛小説」より 著者:芥川竜之介
ょう。
保吉 じゃ耳隠しにしましょう。いつも髪を耳隠しに結った、色の白い、目の
冴《さ》え
冴《ざ》えしたちょっと唇《くちびる》に癖のある、――まあ活動写真にすれ....
「西郷隆盛」より 著者:芥川竜之介
しなくなった。女連れの客が立った後には、硝子の花瓶にさした菜《な》の花ばかりが、
冴え返る食堂車の中にかすかな匂を漂わせている。本間さんは白葡萄酒の杯を勢いよく飲....
「仙人」より 著者:芥川竜之介
余計、商売に身が入らない。節廻しの長い所を唱うと、息が切れる。喉も昔のようには、
冴《さ》えなくなった。この分では、いつ、どんな事が起らないとも限らない。――こう....
「魚河岸」より 著者:芥川竜之介
去年の春の夜《よ》、――と云ってもまだ風の寒い、月の
冴《さ》えた夜《よる》の九時ごろ、保吉《やすきち》は三人の友だちと、魚河岸《うお....
「或る女」より 著者:有島武郎
航の準備をし始めた。絞盤《こうばん》の歯車のきしむ音が船首と船尾とからやかましく
冴《さ》え返って聞こえ始めた。
木村はその日も朝から葉子を訪れて来た。ことに青....
「或る女」より 著者:有島武郎
さらそれがにぎやかなのかもしれない。戸外にはぽくりやあずま下駄《げた》の音が少し
冴《さ》えて絶えずしていた。着飾《きかざ》った芸者たちがみがき上げた顔をびりびり....
「親子」より 著者:有島武郎
雲一ひらもなく澄みわたった空の高みに、細々とした新月が、置き忘れられた光のように
冴えていた。一同は言葉少なになって急ぎ足に歩いた。基線道路と名づけられた場内の公....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
奥山でよくきき慣れた時鳥の声に幾分似たところもありますが、しかしそれよりはもッと
冴えて、賑かで、そして複雑った音色でございます。ただ一人の話相手とてもない私はど....
「霊訓」より 著者:浅野和三郎
。交霊会の席上に出現する燐光でさえもが、右にのぶる如き好条件の下にありては、青く
冴え亘って煙がない。之に反して条件が悪ければ其光が鈍く汚く燻っている。 註――当....
「墓」より 著者:秋田滋
れ、その棺のうえに土がかけられてしまうと、わたくしの精神は、突如として、はッきり
冴えて来たのであります。わたくしは怖ろしい精神的な苦しみを悉に甞めたのであります....