冴え冴え[語句情報] »
冴え冴え
「冴え冴え〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
冴え冴えの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「星座」より 著者:有島武郎
げとげしく空気を劈《つんざ》いて響き交わした。その騒音をくぐりぬけて鐘の音が五つ
冴え冴えと園の耳もとに伝わってきた。
それは胸の底に沁《し》み透るような響きを....
「旗本退屈男」より 著者:佐々木味津三
一夜代が、ただの十六文だというのだ。 されば、退屈男の青月代《あおさかやき》も
冴え冴えとして愈々青み、眉間《みけん》に走る江戸名代のあの月の輪型の疵痕もまた、....
「雪中富士登山記」より 著者:小島烏水
返っている、仰いだ眼を土に落すと、岩も雪も、この色に透徹して、夏には見られない。
冴え冴えと鋭い紫がかった色調が、凸半球の大気に流動している。 六合目――宝永の....
「雪の白峰」より 著者:小島烏水
、天外に碧い空を抜いて、劃然《かっきり》と、白銀の玉座を高く据えたのを見て、その
冴え冴えと振り翳《かざ》す白無垢衣《しろむくえ》の、皺《しわ》の折れ方までが、わ....
「闖入者」より 著者:大阪圭吉
迎え入れた。 やがて浴室の煙突からは白い煙が立上り、薪を割る斧の音が辺の樹海に
冴え冴えと響き渡る。けれどもそれから二時間としないうちに、山荘へは黒革の鞄を提げ....
「寒の夜晴れ」より 著者:大阪圭吉
をあげたようにパタッと降りやんで、不意に切れはじめた雪の隙間から深く澄んだ星空が
冴え冴えと拡がっていった。こうした気象の急変は、しかし、この地方では別に珍しくも....
「河明り」より 著者:岡本かの子
はすっかり均らされ、いつもの爛漫とした大柄の娘の眼が涙を拭いたあとだけに、尚更、
冴え冴えとしてしおらしい。 「いつ頃、これを慥えなさって?」 「三年まえ……」 ....
「旗本退屈男」より 著者:佐々木味津三
つ位のみどり児に愛の露を含ませている容子が、清楚な美しさと言うよりも、変に冷たく
冴え冴えとして、むしろ不気味な位でした。いやそればかりではなく、退屈男を番頭が案....
「夜長姫と耳男」より 著者:坂口安吾
を幸福な遊びのひとときだとふと考えていたのは、思えばフシギなことであった。ヒメの
冴え冴えとした笑顔、澄んだツブラな目のせいであろうか。オレは夢を見たようにフシギ....
「紫大納言」より 著者:坂口安吾
裏をだし、やるせなかった。羅の白衣につつまれた天女の肩がむなしく現れ、つめたく、
冴え冴えと、美しかった。 「山中は夜がひえます」 大納言は、立ちすくんで、つめ....
「生死卍巴」より 著者:国枝史郎
取り巻いている、町の人達の間を分けて、痩せぎすで長身くて色が白くて、月代が青くて
冴え冴えとしていて、眼に云われぬ愛嬌があって、延びやかに高くて端麗な鼻梁に、一つ....
「娘煙術師」より 著者:国枝史郎
ろうか、空を染めていた火事の紅色は、この時おおかた褪めてしまって、夜がふけたので
冴え冴えしさを加えた、月光ばかりが空にみなぎり、家々の甍の屋根を白め、往来の片側....
「春」より 著者:岡本かの子
が却っていつもより綺麗だ。覗いて視ると、庭の木の芽が本当の木の芽よりずっと光って
冴え冴えと映っている。と言っても京子は納得し切らない。 ――そうかしら。 京子....
「レモンの花の咲く丘へ」より 著者:国枝史郎
子 あの晩は丁度今夜のように、室には燈火一つ無く、窓の外ばかりが青海の底のように
冴え冴えとした沈んだ光で取り巻かれておりました。じっとしていると、何者か背後から....
「仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
れるのであります。 ひょっとして、霹靂一声、俄雨が来たあとは、たちまち晴れて、
冴え冴えした月影が心の空に磨き出るのであります。 「嬉しきにつけ、悲しきにつけ」....