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「冷刻〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

冷刻の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
ったが、その瞬間|燕返《つばめがえ》しに、見も知りもせぬ路傍の人に与えるような、冷刻な驕慢《きょうまん》な光をそのひとみから射出《いだ》したので、木部の微笑は哀....
或る女」より 著者:有島武郎
、奴隷《どれい》のように畳に頭をこすり付けてわびよう……そうだ。……しかし倉地が冷刻な顔をしてわたしの心を見も返らなかったら……わたしは生きてる間にそんな倉地の....
生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
のあの時の面影だった。自分を信じていいのか悪いのかを決しかねて、たくましい意志と冷刻な批評とが互いに衷に戦って、思わず知らずすべてのものに向かって敵意を含んだ君....
牛肉と馬鈴薯」より 著者:国木田独歩
常であった。しかし僕の悲痛は恋の相手の亡《なく》なったが為の悲痛である。死ちょう冷刻《れいこく》なる事実を直視することは出来なかった。即ち恋ほど人心を支配するも....
ファウスト」より 著者:ゲーテヨハン・ヴォルフガング・フォン
の喜を授けると同時に、 己に道連をくれた。それがもう手放されぬ 道連で、そいつが冷刻に、不遠慮に 己を自ら陋しく思わせ、切角お前のくれた物を、 嘘き掛けたただの....
永日小品」より 著者:夏目漱石
かいのがいつの間にか、降り出した。風もない濁った空の途中から、静かに、急がずに、冷刻に、落ちて来る。 「おい、去年、子供の病気で、煖炉《ストーブ》を焚《た》いた....
虞美人草」より 著者:夏目漱石
はいくらもあるが、手詰《えづめ》に出られると跳《は》ねつける勇気はない。もう少し冷刻に生れていれば何の雑作《ぞうさ》もない。法律上の問題になるような不都合はして....
坑夫」より 著者:夏目漱石
つけるばかりにしてまで見せてやる葬式である。まことに無邪気の極《きょく》で、また冷刻の極である。 「金しゅう、どうだ、見えたか、面白いだろう」 と云ってる。病人....
写生文」より 著者:夏目漱石
れる。しかしそう思うのは誤謬《ごびゅう》である。親は小児に対して無慈悲ではない、冷刻でもない。無論同情がある。同情はあるけれども駄菓子を落した小供と共に大声を揚....
彼岸過迄」より 著者:夏目漱石
り親切だと云われる。しかし今の御言葉はあなたの口から出たにもかかわらず、他人より冷刻なものとしか僕には聞こえませんでした」 僕は頬《ほお》を伝わって流れる彼の....
満韓ところどころ」より 著者:夏目漱石
の男は胃病でといつでも証人に立ってくれた。して見ると、橋本はただ演説に対してだけ冷刻《れいこく》なのかも知れない。奉天でも危うく高い所へ乗せられるところを、一日....
道草」より 著者:夏目漱石
く次の機会が来た時、彼はこういった。 「己《おれ》は決して御前の考えているような冷刻な人間じゃない。ただ自分の有《も》っている温かい情愛を堰《せ》き止めて、外へ....
明暗」より 著者:夏目漱石
充分もっていらっしゃるのは、あなたの顔つきでよく解《わか》ります。あなたはそんな冷刻な人ではけっしてないのです。あなたはあなたが昨日御自分でおっしゃった通り親切....
道標」より 著者:宮本百合子
多計代との間であんまりしばしば経験しなければならない。それが伸子のやさしくなさ、冷刻さと云われるときこれまで何度も伸子の堪えがたさは燃えて憤りにかわって行ったの....
百物語」より 著者:森鴎外
」と云った。爺いさんのこう云う時、顔には微笑の淡い影が浮んでいたが、それが決して冷刻な嘲《あざけり》の微笑ではなかった。僕は生れながらの傍観者と云うことに就いて....