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冷徹
「冷徹〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
冷徹の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「我が馬券哲学」より 著者:菊池寛
場合。最後の場合は絶対に買うべきである。 一、その場の人気の沸騰に囚われず、頭を
冷徹に保ち、ひそかに馬の実力を考うべし。その場の人気ほど浮薄なるものなし。 一、....
「不尽の高根」より 著者:小島烏水
の麓から噴き出る水がたたえたもので、社の神橋の下をすみ切って流れる水は、夜目にも
冷徹して、水底の細石までが、うろこが生えて、魚に化けそうだ。金魚藻、梅鉢藻だのと....
「棺桶の花嫁」より 著者:海野十三
チミを取戻し得ざらん――」 「もういいよ。そのくらいで……」 「僕は鬼神のような
冷徹さでもって、ミチミの身体を嚥んだ空虚の棺桶のなかを点検した。そのとき両眼に、....
「木犀の香」より 著者:薄田泣菫
の深さを増し、大気はいよいよその明澄さを加へてくる。月の光は宵々ごとにその憂愁と
冷徹さを深め、虫の音もだんだんとその音律が磨かれてくる。かうした風物の動きを強く....
「踊る地平線」より 著者:谷譲次
冷たい固いものは、他ならぬその女の脚だったのです。じつに彼女の脚は、鉄板のように
冷徹でした。岩石のように堅固でした。そして、コンクリイトのように細かくざらざらに....
「握った手」より 著者:坂口安吾
者に変ったのである。眼は学者のものになりロイド眼鏡と一つになってケンビ鏡のように
冷徹に哀れな生物を観察しはじめたのである。 「いつから、そう見えるんですか」 「....
「夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
、その成りゆきを見戍ることが出来るようになった。それと同時に、好奇と驚異、清寧と
冷徹――詩の両極をなす思想が、かれを中軸として旋回しはじめるのを覚える。慣らされ....
「光り合ういのち」より 著者:倉田百三
める心の強いだけ、熱情を帯びるのだ。それは詩人的な激情のあらわれも、哲学者らしい
冷徹なあらわれもあるが。 私はこのリンチ事件が、こうした意味で、種々の深刻な問....
「地上」より 著者:島田清次郎
平一郎は涙を拭って校長室を出た。 校門を出るとき平一郎の背後で始業の鐘の音が
冷徹な朝に響きわたって聞えた。灼熱し緊縮した頭脳の惑乱へその鐘の音は、ひとりで考....
「雪代山女魚」より 著者:佐藤垢石
。 湯の湖へは姫鱒、湯川へは川鱒と虹鱒を、帝室林野局で年々数多く放流している。
冷徹な峡間は、湯滝の下に苔生した天然林を抜け出して、戦場ヶ原を幾曲がり、龍頭の滝....
「木の葉山女魚」より 著者:佐藤垢石
さき、川の水が温まってくると、中流に遊んでいた山女魚は上流へ上流へと遡り、夏には
冷徹な渓水に棲みついてしまう。九月末から十月になれば、親の山女魚は、浅い流れの小....
「水の遍路」より 著者:佐藤垢石
、深い神流川が流れている。秩父古生層の洒麗な岩の間から、滴り落ちるこの川の水は、
冷徹そのものである。鬼石の町から坂原を越え、万場へ出て中里村、上野村へ入れば、次....
「中世の文学伝統」より 著者:風巻景次郎
ば木下利玄の歌に見えた視覚的な美しさであった。根源には視覚によっているけれども、
冷徹な智的判断の是非とも要り用なものなのである。そして『枕草紙』で成功した、こう....
「ラスキンの言葉」より 著者:小川未明
に妥協し、資本力の前に膝を屈した徒の如きは、表面いかに、真摯を装うことありとも、
冷徹たる批評眼の前に、真相を曝らし、虚飾を剥がれずには置かれぬだろう。 一時の....
「凍るアラベスク」より 著者:妹尾アキ夫
かく表面だけは楽しげに見えても、立入ってみればそれぞれ不幸を抱いている。それより
冷徹した冬の大空を昇る月のように――この月に自分を例える時には彼女はいつも涙ぐま....