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凍て
「凍て〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
凍ての前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「家霊」より 著者:岡本かの子
らないで帳場を勤め出した。 押し迫った暮近い日である。風が坂道の砂を吹き払って
凍て乾いた土へ下駄《げた》の歯が無慈悲に突き当てる。その音が髪の毛の根元に一本ず....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
、ばたんと音を立ててスケッチ帳を閉じて、鉛筆といっしょにそれをふところに納めた。
凍てた手はふところの中の温みをなつかしく感じた。弁当は食う気がしないで、切り株の....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
永久の春はやみ、ジュピターによって四季が作られた。人間は夏の焼くような暑さ、冬の
凍てつく寒さを防ぐために隠れ家を求めることが必要となった。土地の天然の収穫で満足....
「眉かくしの霊」より 著者:泉鏡花
三カ所、水道口があるのにそのどれを捻っても水が出ない。さほどの寒さとは思えないが
凍てたのかと思って、谺のように高く手を鳴らして女中に言うと、「あれ、汲み込みます....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
縮みは、加減だけで済むものを、醤油に水を割算段。 と釜の湯気の白けた処へ、星の
凍てそうな按摩の笛。月天心の冬の町に、あたかもこれ凩を吹込む声す。 門附の兄哥....
「革鞄の怪」より 著者:泉鏡花
座敷は無いか。――貴方はいかがです。」 途中で見た上阪の中途に、ばりばりと月に
凍てた廻縁の総硝子。紅色の屋号の電燈が怪しき流星のごとき光を放つ。峰から見透しに....
「神鷺之巻」より 著者:泉鏡花
の声。魂ぎる声。 這ったか、飛んだか、辷ったか。猟夫が目くるめいて駆付けると、
凍てざまの白雪に、ぽた、ぽた、ぽたと紅が染まって、どこを撃ったか、黒髪の乱れた、....
「照葉狂言」より 著者:泉鏡花
越えて、流の音もす。 東より西の此方に、二ならび両側の家軒暗く、小さき月に霜|
凍てて、冷たき銀敷き詰めたらむ、踏心地堅く、細く長きこの小路の中を横截りて、廂よ....
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
から、むッくりと垂れて、一つ、くるりと巻いたのは、蛸の脚、夜の色|濃かに、寒さに
凍てたか、いぼが蒼い。 二 涼しい瞳を動かしたが、中折の帽の庇の....
「星女郎」より 著者:泉鏡花
「わっ。」 と云って、境は驚駭の声を揚げた。 遮る樹立の楯もあらず、霜夜に
凍てたもののごとく、山路へぬっくと立留まった、その一団の霧の中に、カラカラと鐸が....
「雪霊記事」より 著者:泉鏡花
けない中で思いました。 九歳十歳ばかりのその小児は、雪下駄、竹草履、それは雪の
凍てた時、こんな晩には、柄にもない高足駄さえ穿いていたのに、転びもしないで、しか....
「沼畔小話集」より 著者:犬田卯
模様が怪しくなってちらほらやって来るが、それでもとうとう春は訪れて来た。雀は雪に
凍てた羽根をのばして朝早くから啼き、四十雀や目白などの美しい小鳥の群も庭先の柿の....
「誓之巻」より 著者:泉鏡花
あなた、神様がいらっしゃいます。」 予はまた言わざりき。 誓 月|
凍てたり。大路の人の跫音冴えし、それも時過ぎぬ。坂下に犬の吠ゆるもやみたり。一し....
「ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
新造さんへ見せたさに、わざと仏壇の蝋燭を提灯に、がたくり格子も瑠璃の扉、夜の雪の
凍てた道さえ、瑪瑙の橋で出なすったのに……ほんとうにその時のお胸のうちが察しられ....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
欧州の北に旅し、那の山には雪が幾重にも積もっていた。谷のあたりを歩めば、樹下には
凍てつく風が吹いてきたものだった。(那威行路所見)) 欧洲欲。(極北夜半望日) ....