初冬[語句情報] » 初冬

「初冬〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

初冬の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
一 お蓮《れん》が本所《ほんじょ》の横網《よこあみ》に囲われたのは、明治二十八年の初冬《はつふゆ》だった。 妾宅は御蔵橋《おくらばし》の川に臨んだ、極《ご》く手....
或る女」より 著者:有島武郎
を前後に揺すぶって、赤子《あかご》でも寝かしつけるようにした。戸外ではまた東京の初冬に特有な風が吹き出たらしく、杉森《すぎもり》がごうごうと鳴りを立てて、枯れ葉....
星座」より 著者:有島武郎
肩を落しながらそこらを見廻わした。夜学校を出た時真暗らだと思われていた空は実際は初冬らしくこうこうと冴えわたって、無数の星が一面に光っていた。道路の左側は林檎園....
生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
っしぐらにこの高原の畑地を目がけて吹きおろして来る風は、割合に粒の大きい軽やかな初冬の雪片をあおり立てあおり立て横ざまに舞い飛ばした。雪片は暮れ残った光の迷子の....
紅玉」より 著者:泉鏡花
時。 現代、初冬。 場所。 府下郊外の原野。 人物。 画工。侍女。(烏の仮装したる)....
みさごの鮨」より 著者:泉鏡花
綿のように処々白い雲を刷いたおっとりとした青空で、やや斜な陽が、どことなく立渡る初冬の霧に包まれて、ほんのりと輝いて、光は弱いが、まともに照らされては、のぼせる....
鷭狩」より 著者:泉鏡花
初冬の夜更である。 片山津(加賀)の温泉宿、半月館|弓野屋の二階――だけれど、....
小春の狐」より 著者:泉鏡花
て、そして温泉宿を出た。 戸外の広場の一廓、総湯の前には、火の見の階子が、高く初冬の空を抽いて、そこに、うら枯れつつも、大樹の柳の、しっとりと静に枝垂れたのは....
唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
…風が冷く、山はこれから、湿っぽい。 秋の日は釣瓶落しだ、お前さん、もうやがて初冬とは言い条、別して山家だ。静に大沼の真中へ石を投げたように、山際へ日暮の波が....
薄紅梅」より 著者:泉鏡花
腕を拱いた。 「少からず煩いな、いつからだね、そんな事のはじまってるのは。」 「初冬から年末……ははは、いやに仲人染みたぜ……そち以来だそうだ。」 「……だそう....
政談十二社」より 著者:泉鏡花
婆さんに話しかける。 十二社あたりへ客の寄るのは、夏も極暑の節|一盛で、やがて初冬にもなれば、上の社の森の中で狐が鳴こうという場所柄の、さびれさ加減思うべしで....
孔乙己」より 著者:井上紅梅
帳合を続けていた。 中秋節が過ぎてから、風は日増しに涼しくなり、みるみるうちに初冬も近づいた。わたしは棉入を著て丸一日火の側にいて、午後からたった一人の客ぐら....
白光」より 著者:井上紅梅
前に突立っていた。 涼風はそよそよと彼の白髪交りの短い髪の毛を吹き散らしたが、初冬の太陽はかえって暖かに彼を照し、日に晒された彼は眩暈を感じて、顔色は灰色に成....
式部小路」より 著者:泉鏡花
に処して、なお巴里、伊太利の歌に魂を奪われず。却って佃島の(鰯こ)に心を澄まし、初冬の朝の鰹にも我が朝の意気の壮なるを知って、窓の入口に河岸へ着いた帆柱の影を見....
斎藤緑雨」より 著者:内田魯庵
を衝いた痛快極まる冷罵であった。 緑雨が初めて私の下宿を尋ねて来たのはその年の初冬であった。当時は緑雨というよりは正直正太夫であった。私の頭に深く印象している....