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刺々
「刺々〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
刺々の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「木の子説法」より 著者:泉鏡花
れた鎌で、山がかりに出来た庭裏の、まあ、谷間で。御存じでもあろうが、あれは爪先で
刺々を軽く圧えて、柄を手許へ引いて掻く。……不器用でも、これは書生の方がうまかっ....
「失楽園殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
吾々以外の人物が潜んでいるんだ――其奴が屹度犯人なんですよ」 そして、狐の様に
刺々しい、鹿子の顔を凝視めるのだった。 こうして、訊問は終了したが、鹿子はコス....
「四日間」より 著者:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ
ッと云て山査子の叢立に寄懸って了った。匝れば匝られるものを、恐しさに度を失って、
刺々の枝の中へ片足|踏込で躁って藻掻いているところを、ヤッと一撃に銃を叩落して、....
「光は影を」より 著者:岸田国士
いんとするのであつた。この一年あまり、同じ屋根の下で暮していた時分の、どことなく
刺々しい、つねに反抗的な身構えで誰にでも突つかゝろうとした彼女の態度は、まつたく....
「法華僧の怪異」より 著者:田中貢太郎
華僧の事を思いだした。 「法華僧ですか。見ましたよ、あれを御存じ」 名音の声は
刺々しかった。 「では、とうとう御覧になりましたね」 「見ましたよ、あれは貴女の....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
よ。」 「金が必要だというんだね。」 「決まってるじゃないの。」 葉子があまり
刺々しい口を利くので、負け目を感じていた庸三は、神経にぴりっと来た。 ちょうど....
「或る男の手記」より 著者:豊島与志雄
房を含ましたり頬ずりをしたりしながら、私の方へじろりと投げる妻の眼付に、私は或る
刺々《とげとげ》しいものを感じて、ぞっとするようなことがあった。どうして子供なん....
「好意」より 著者:豊島与志雄
った。 吉岡の顔は見違えるように変っていた。朝の光のせいばかりではなく、陰欝な
刺々した曇が取れて、静に落付いて澄んでいた。今まで垢じみていたのを、湯にはいり髯....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
隠そうと努めた。クリストフはやって来るのをやめなかった。ジャックリーヌは意地悪い
刺々《とげとげ》した小さな矢を、なんの気なしに彼へ投げつけた。彼はそれを勝手にさ....
「女客一週間」より 著者:豊島与志雄
作だ。坐り方が、余りにも固苦しい。全体に、余りにも曲線が乏しい。看護人は、病苦の
刺々を包みこむふんわりした真綿みたいでなければならないのだ。島村は煙草に火をつけ....
「レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
い麻の仕事着と、古いズボンと、古い背嚢《はいのう》と、両端に鉄のはめてある大きな
刺々《とげとげ》の棒とが。一八一五年十月にディーニュを通って行った頃のジャン・ヴ....
「キャラコさん」より 著者:久生十蘭
と、足音を忍ばせながら、そっとレエヌさんの部屋をのぞきに行った。 頬のあたりに
刺々《とげとげ》しいものがあるが、それを除くと、平和といってもいいようなおだやか....
「魔都」より 著者:久生十蘭
い面になっている。
ハッチソンの方は、この一日でまるで人が違ってしまったような
刺々しい顔になり、窪んだ眼の周囲に鳴神の隈《くま》のようなものが出来、日ごろでさ....
「地は饒なり」より 著者:宮本百合子
、苦痛の第一がやって来た。彼女は、幸福に優しく抱擁される代りに、恐ろしく冷やかに
刺々《とげとげ》しい不調和と面接し、永い永い道連れとならなければならなかったので....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
絶えのない嗚咽だった。 責められているかの如く、 ――なにを泣く。 高氏は
刺々と心でののしる。 あッちへ行け。 消えてなくなれ。 しかし、それはじぶ....