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前庭
「前庭〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
前庭の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「婦系図」より 著者:泉鏡花
草深のはずれの町、前途は直ぐに阿部の安東村になる――近来評判のAB横町へ入ると、
前庭に古びた黒塀を廻らした、平屋の行詰った、それでも一軒立ちの門構、低く傾いたの....
「自叙伝」より 著者:大杉栄
付の北川大尉は、そのまだ第一期生付であった頃から、妙に僕を憎みだした。 学校の
前庭で彼に会う。僕はその頃の停止敬礼というのをやる。一間ばかり前で止まって、挙手....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
いて、全体が樹脂っぽい単色画を作っていた。
法水は正門際で車を停めて、そこから
前庭の中を歩きはじめた。壁廓の背後には、薔薇を絡ませた低い赤格子の塀があって、そ....
「春昼」より 著者:泉鏡花
障子を半開きにして、姉さん冠の横顔を見た時、腕白く梭を投げた。その年取った方は、
前庭の乾いた土に筵を敷いて、背むきに機台に腰かけたが、トンと足をあげると、ゆるく....
「温泉」より 著者:梶井基次郎
のひまでいる証拠である。 家の入口には二軒の百姓家が向い合って立っている。家の
前庭はひろく砥石のように美しい。ダリヤや薔薇が縁を飾っていて、舞台のように街道か....
「続獄中記」より 著者:大杉栄
の前のはじに腰をかけて、金あみ越しにそとを眺めていた。門が開くと監獄の前の、広い
前庭の景色が眼にはいった。その瞬間だ。僕は思わず腰をあげて、金あみに顔を寄せて、....
「絶景万国博覧会」より 著者:小栗虫太郎
戸を繰り、硝子戸を締めて、階段を下りて行ったが、何故か本屋に帰るではなく、離れの
前庭にある楓の樹に寄りかかって、じっと耳を凝らし始めた。すると、それから二、三分....
「石塀幽霊」より 著者:大阪圭吉
屋敷内へ這入る。五間程隔って正面に台所口がある。左は折曲った石塀の内側。右は宏い
前庭の植込を透して、向うに母屋が見える。日中の暑さで水を撒くと見えて、地面は一様....
「母と娘」より 著者:岡本かの子
、何事をも共同でやっていた。中古のガタガタ自動車を安く買い求めて、車庫が無いので
前庭の草花の咲いて居る芝生へ乱暴に押し入れて合羽をかけて置く。郊外へ出かける折り....
「春」より 著者:岡本かの子
辺に出る。二間幅の静かな通りで、銀行や会社の重役連の邸宅が、青葉に花の交った広い
前庭や、洋風の表門を並べている。時折それらの邸宅の自家用自動車が、静かに出入りす....
「ガルスワーシーの家」より 著者:岡本かの子
く取り付き難い気配いに幾分当惑の色を浮べた。 此の家は道路に面して鉄柵を張った
前庭を置き暗褐色のどっしりした玄関が冷淡に控えて居るが、一寸横へ廻って見ると、こ....
「子をつれて」より 著者:葛西善蔵
履いて、終点で電車を下りて、午下りの暑い盛りをだら/\汗を流しながら、Kの下宿の
前庭の高い松の樹を見あげるようにして、砂利を敷いた坂路を、ひょろ高い屈った身体し....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
じゃない、うちの女房が、襷をはずしながら、土間にある下駄を穿いて、こちらへ――と
前庭を一まわり、地境に茱萸の樹の赤くぽつぽつ色づいた下を。それでも小砂利を敷いた....
「註文帳」より 著者:泉鏡花
身を開いて一足あとへ、体を斜めにする外套を被た人の姿を映して、余の明は、左手なる
前庭を仕切った袖垣を白く描き、枝を交えた紅梅にうつッて、間近なるはその紅の莟を照....
「押しかけ女房」より 著者:伊藤永之介
いるので留守番もないはずだつた。 昨夜雨があつたのか、シツトリと湿つている家の
前庭を、三毛猫が音もなく横切つて行つた。 復員兵の多くは佐世保近くの上陸地から....